エピローグ

数か月後、少人数のデミ・ヒューマンとドローンをお供にして他の大陸に渡ったティナとアルフレートは、その大陸の民の生活を改善すべく、行動を開始した。


十年ほどかけてその大陸の生活水準を向上し、安定させたらまた次の大陸に移動。

こうして百年ほどもかけて惑星の全ての大陸や諸島を廻り、出会いと別れを繰り返しながら、民の生活水準を上げていった。


さすがに百年以上経つとティナの身体も成長し、外見は十二歳前後になった。

アルフレートやデミ・ヒューマンたちは肉体的限界で何度かボディを交換したが、アルフレート以外はティナの外見年齢に合わせる者が多かった。

ただし国家の重責を担っていたデミ・ヒューマンたちは、プチ整形で加齢を表現して、肉体的限界が来たら公称年齢相応に見えるボディに変更していた。


今では全ての国の国家運営陣にデミ・ヒューマンが複数存在し、惑星規模で民の生活水準を守っている。

そんな中、またアルフレートのボディ交換時期がやって来た。


「ティナ、このボディはどうですか?」

「え、アル若い! いつもの青年執事じゃなくて、少年執事だ! 私の見た目とおんなじくらい?」

「はい、そう設定しました。しかもこのボディ、レベルアップを繰り返したのでティナと同様の年齢変化になるはずです」

「よくそんなに魔核あったね」

「何度スタンピードを殲滅したと思っているんですか。まだまだ余ってますよ」

「そうだった。アホほど魔獣倒してたね。でも、何で今回はそんな若いボディにしたの? 国によっては未成年だから、色々と制約出て動きにくくない?」

「シュタインベルクに行きましょう」

「あそこは確か十二歳で準成人だったから制約は低いだろうけど、何しに行くの?」

「ティナ、私と結婚しませんか?」

「………え?」

「結婚して領都近くの森に住み、魔獣素材を売って二人で一般人として暮らしませんか?」

「……どういうこと?」

「今やこの星の住民は、百年前と比べて格段に生活水準が上がりました。そろそろティナ自身が、夢を叶えてもいいんじゃないですか?」

「夢を叶えるって、どうやって?」

「今のシュタインベルクでは、ティナのことを知っているのは領主一族だけです。つまり一般人として領都に行っても、領主家以外は誰も気づきません。クラウから領主家に話を通してもらえば、ただの一般人として生活出来るのでは?」

「…それは出来そうだけど、何でアルと私が結婚するの?」

「普通の夫婦生活、してみたくありませんか?」

「……したい」

「私とでは嫌ですか?」

「嫌じゃない。だけどアルとは一緒にいるのが当たり前になってるから、新婚夫婦は装えないかも」

「ダメですか。ティナとの夫婦生活を実体験してみたかったのですが…」

「何だそう言うことか。じゃあいいよ、新婚夫婦してみよう」

「良かった。ではまずクラウに戸籍関係のお願いに行きましょう」

「クラウって、今どこに住んでるんだっけ?」

「クラウ夫婦も引退して、領都東の森に屋敷を建てて住んでますね」

「お、じゃあご近所さんになるのもいいね。だけど住む家はどうするの?」

「私が最初に作ったティナの家ではいけませんか? 保存処置して仕舞ってありますから、きれいなままですよ」

「おお、いいね! なんか昔に戻ったみたいで楽しそう♪」

「若干外見年齢は上がってますけどね」

「それはそれで、また違った楽しみ方が出来そうだよ」

「そうですね。ちなみにこのボディ、生殖機能ありです」

「え”? ……それはちょっと、まだ覚悟出来ないかも」

「ティナの身体はまだ成長途中ですから、あと百年ほどはダメですよ。でも、子どもが欲しくなったら言ってください。私もティナの子どもを育ててみたいです。父親って、どんな感じなんでしょう? 楽しみです」

「そこまで考えちゃってたんだ……。私、百年で覚悟決まるのか?」

「百年もあれば、さすがに充分なのでは?」

「……善処します」


その後のティナとアルは、数年ごとに世界各地を移動して、一般人として暮らした。


そしてティナは、届かないと思っていた夢を手に入れた。



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遺棄られ幼女の宝物 やっつけ茶っ太郎 @chimilunamiy

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