ネット廃人

汐なぎ(うしおなぎ)

全一話

 フォローは、ケンタウルスの若者で、半人半馬の厳つい見た目をしている。


 彼は、山で狩りをして暮らしていたのだが、国の方針で狩猟が全面禁止になり、職を失う事になった。


 彼はくさって家にひきこもり、暇な時間をSNSやソシャゲをして過ごすようになった。今まで遊んだ事がなかった彼は、反動で、どっぷりとネットにはまってしまう。


 そんな様子だったので、同居している家族は、彼を煙たがるようになった。家族が何度注意をしても、彼は態度を改めようとしない。たまりかねた母親は、穀潰しはいらないと、彼を家から追い出した。初めに払う敷金礼金は親が持ち、数ヶ月分の家賃も払うから、後は自分でなんとかして一人で暮らせという。


 フォローは仕方なく就職活動をしてみたのだが、彼には何の資格もなく、弓を撃つ以外に取柄もない。肉体労働はしたくないし、サービス業につこうにも厳つい見た目が災いして、軒並み不採用だ。仕方なく職安で資格を取ろうとするのだが、ネットで遊ぶのが楽しくて、真面目に通おうとしない。


 あっという間に、数ヶ月の時が流れ、家賃の援助も止まってしまった。貯蓄も課金で使い果たし、このままでは生活が出来ない。


 そこで彼は、以前、占いでヘラクレスの矢を足に落とすと死ぬと言われていたのを思い出した。その方法で死ねば、どうやら星座になれるらしい。彼は、星座ならお腹が空かないだろうし、働く必要もないだろうと考えた。


 随分、会ってはいないが、ヘラクレスとは旧知の仲だ。彼はヘラクレスに会いに行くと、挨拶もそこそこに、家の中に入る。すると、奥の壁に矢が立てかけられているのを見つけた。


 彼は、当初の予定通り、矢を手に取って足に落とす。


「いってーーーー!」


「大丈夫か?」


 想像を絶する痛みに悶える彼を見て、ヘラクレスは心配して声をかける。しかし、彼の足はみるみる紫になり、それが体中に回って死んでしまった。


 彼は、激しい痛みの代償に、計画通り星座になる事が出来た。しかし、彼はすぐに後悔する事になる。


「これじゃ、ソシャゲもSNSも出来ないじゃないか!」


 そう。彼の手元には大切なスマホがなかったのだ。

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