憑依のススメ


 有名な賞を手にした著者。
 優れたホラーを連発できる秘訣は、なんと実際に幽霊と密に接することだった!
 取り憑かれた者の生活を赤裸々に描いた異色の短編。



「どうしてこの人は優れた作品を次々と書けるのだろう?」

 そう思ったことはないだろうか。称賛と驚嘆、嫉妬が混じった長年の謎。
 本作を読んでその真相がはっきりした。著者は別世界の住人だったのである。
 そうか、それなら仕方がないなと腹落ちした気分だ。

 この体験記はそんな謎の他にも興味深い点があり、著者が幽霊に憑かれてひたすらに突き進む様は、生者の世界ともリンクしている点である。
 要するに借金してでも貢いで破滅していく男性とそう変わらないのが哀しいということだ。

 しかし、今までもおびただしい数の恐怖を描いてきた著者のこと、おそらくは精力も並ではないのだ。
 きっと躍進は続いていくのだろう。
 どこかで遺稿にならないことを祈るばかりだ。