第12話

八幡神社についたぼくらは玄龍の背から滑り降りた。

玄龍が祠の前に行って、ぶつぶつと呪文を唱えはじめる。すると、祠の扉がゆっくりと開き、中から強い光がぼくらを突きさした。目が少し慣れてきてから目を細めて見てみると、確かに青龍の宝玉らしきものがそこにある。

玄龍はヘビの姿に戻って、祠の中に入ると、宝玉を抱きかかえるように巻きついた。

まるで昔からその姿で東を守ってたみたいだ。

玄龍は祠の中からしばらく黙ってこちらをみてから、重々しく言った。

「祠の扉を閉めてくれ」

ん?さっきは自分で開いてたよね?と思ったが、だまって扉を閉めた。それから、ぼくらは祠に向かって手を合わせて

「東を守ってください。よろしくお願いします」と祈った。


ようやく朱雀との約束を果たして、さすがにもう元気いっぱいとは言えない状態でぼくらは家に向かって歩き始めた。

「朱雀はみんなが心配しないように何とかするって言ってたけど、どうなったかな?もう夕方だし、家に着くころには夕飯の時間を少し過ぎちゃうかもね…」

家が見えてきた。玄関の前でお母さんが心配そうに左右を見ている。

あれ?お母さんは具合が悪くて寝てるはずじゃ…

走ってお母さんのところに行くと、お母さんもかけ寄ってきて

「ケンタ、心配したよ。今お父さんがあちこち探しまわってる」と言った。

朱雀~!何とかするって言ってたのに、忘れてるじゃないか!

「お母さん、心配させてごめんね。だけど、お母さん寝てなくていいの?」

「ケンタが心配で寝てられないよ」

家からりおが走り出てきて、「お兄ちゃーん」とぼくの足に抱き着いた。

「お兄ちゃん、どこ行ってたの?ノートぐちゃぐちゃにしてごめんなさい...」

りおの顔は真っ赤で、涙と鼻水でべとべとになってた。

ぼくはりおの頭をなでながら、

「ごめんごめん、みんな心配してたんだね。ぼくらは」

と言って、雪丸とヒメに目をやると、ムゲンが目に入った。

「あ、このスズメはムゲンって言って、ぼくが公園で助けたの。これからは、家で飼うからね」と言っていると、お父さんが帰ってきた。

「ケンタ、どこへ行ってた!お昼ごはんも食べずに…」

お父さんは走ってきて、ぼくの顔を見て、大きく息を吸って

「何してっ…!」と大声で言いかけて、ふとやめてぼくを抱きしめた。

「ケンタ、朝はどなってごめん…」お父さん、涙声…?ずっと走ってたのかな?心臓の音がすごく速い。

「お父さん、だいじょうぶ。ぼく、今日はすごいことしてきたんだ」

お父さんはバッとぼくからはなれて、

「何をのんきなことを言ってるんだ!こっちはすごく心配したんだぞ!」とどなった。なんだよ~、やっぱりお父さんは変わらないな…。

でも、心配してくれてたみたいだし、お礼は言っておこう。

「お父さん、探してくれてありがとう」と言ったら、

「その前にごめんなさいだろう?」と怒られちゃった。


これでぼくの宝探しになるはずだった家出の話はおしまい。

ムゲンは、結局かごの中にいるのは嫌みたいなので、外で暮らしてる。毎日うちの庭に遊びに来て、雪丸のおやつをかすめ取っている。

「ムゲン、またオレのオヤツ取ったなー、返せっ!口をあけろっ!」

「うきゅまるはん、おく、オアツなんか、とってまへん」

「うそをつくなーっ!」

へいの上からヒメが

「あいかわらず、バカだね…」と言って冷たい目で見ている。

青龍は天でどうしてるかなぁ?朱雀、白虎、玄武、玄龍たちの神社にもまた行ってみなくちゃな。

特に白虎には元気を出してほしいから、友達をたくさん連れて行こう。神社にお参りしてから、アスレチック公園で遊んだら、楽しいだろうな。

お父さんは相変わらずきびしいけど、どなった後に、「ケンタ、いっしょにランニング行こうか」ってさそってくるようになった。そういう時は、必ず、雪丸がコーフンして

「行こうぜ、行こうぜーっ!」ってうるさいんだよね。


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