好意、親しみetc.、相手に対する感情は、量には換算できない。互いに「同じ思い」を共有している、と思っていても、温度差が生じるのは当たり前。しかし、違いが大きくなると、関係性までもが変化する。相手が自身に向けている「思い」を正確に捉えられない限り、片恋と同じ。相手のために差し出す「モノ」には、相手に対する「心」が反映されている。モノは感情を測る器。どれ程の思いが込められているのかがわからない限り、関係は続かない。相手にとって必要なモノを差し出すことができるのは、相手を大切に思うから。そんな気持ちを理解できないまま、二人の時間は終わりを告げる。共に過ごした喜びは、いつしか消えてしまう。一方の心にのみ残されたまま。切なさが余韻となる作品。誰もが、同じ思いをもったことがあるはず。忘れていた「かつての思い」が、心の奥から湧き上がり、一層、切なさを掻き立てる。最小限に削られた言葉で綴られた本作品からは、透明な作者の感性が、そして、身近な経験から抽出された思いの集積が込められている。