第5話 白石 彩花 3
私の名前は白石 彩花。私は、今仮面を被って高校生活を送っている。本当の自分とは違う姿で。私には、両親がいない。
父は交通事故で亡くなり、母はそのストレスから病気になり亡くなってしまった。父が亡くなったのは、私が小学校1年生の頃だ。
そして2年生の頃に、母は病気になってしまった。そんな私は、小学校2年生の秋に母方の祖父母に引き取られた。毎日、毎日、母の入院先に行っては、辛そうな母をみて地獄のような日々だった。
それでも行かないという選択肢はなかった。母と過ごす時間が少しでも欲しかったから。そんな私に母はいつもこんなことを言っていた。
「元気で明るく、愛想のある子になりなさい。そうすればみんなから愛されるわ。」
その言葉を、私が病室に行くたび言っていた。あの時期はまだ秋なのに私の中では冬だと思うくらいに寒くて冷たかった。
そして母は、私が小学校2年生の冬に無くなってしまった。私は立ち直れなかった。いつかはその時が来ると頭の中では分かっていたはずなのに。分かっていたはずなのに私の心の中は時間が経つにつれズタボロになってしまった。
学校も3年間は行かなかった。そんな私を3年間見守ってくれたのは、祖父母だった。いつも優しくしてくれて、私を癒してくれた。
小学6年生になるとそろそろ祖父母に迷惑がかかると思い学校に行くことした。最初はなれなかったもののクラスメイトは優しくしてくれ徐々にクラスに馴染めていった。
そして中学生なった。私はそこでようやく思い出す。母が言っていたあの言葉を。私の中では、あれは母の遺言のようなものだと思ったていた。だから私は母が言っていたことを中学校になって行動に移すことした。
私はもともとあまり明るい子ではなかった。しかし毎日、毎日笑顔の練習をしてクラスメイトには明るく接して、顔にもこだわって毎日化粧水やら使ったりして元気で明るくて愛想のある子を演じた。
中学校はそのおかげで誰からも好かれるような存在になった。しかしいつからだろう。演じるのが苦になっていった。好かれるせいで絶えないラブレター、校舎裏に呼ばれては何回も告白され、それすべてを断った。
それだけが嫌という訳では無い。毎日、毎日偽りの自分を演じるのが辛くなってきた。
なぜ母はあんなことをいったのだろう?
と毎晩のように思うことになった。そして私は気づいた。母が言ったことの意味を。恐らく母は私に愛情を沢山受け取って欲しかったのだろう。最後まで愛情を注ぐことが母は出来なかったから。
そう思うと母はいかに私を愛していたかが分かるような気がした。だから演じるしかないのだ。
母が最後にくれた愛情を。
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