第2話 転生したらしい
-side ハッカ-
とりあえず、落ち着こう。
俺はさっきまで謎の天使と煌びやかなお花畑の中にいたんだよね?
身長は……、かなり縮んでいる。
目線が低い。
「確か残念天使にカッチーーンときたんだった。あれは酷い事件だった」
それにしても、見渡す限りに木々が生えている。おそらくここはどこかの森の中だろう。
--シーーン
あたりは静寂に包まれている。
「ハッ……!ハッカ!!」
遠くから男の人の声が聞こえる。
おそらく、俺のことだと思う。
あれ?俺は会社員だったはず、確か名前は……、名前は……。
「……?あれ?」
思い出せない。
「ハッカ……!良かった……」
俺の前に来て俺のことを抱き上げたこの人はアイク。俺の父親だ。……あれ?おかしい、俺の父親の名前は……?あれ……?
--思い出せない。
「ハッカ!良かった!!家に戻ろう!」
「う、うん!」
とりあえず、色々混乱しながらも、目の前の父親の言うことを聞く。……と言うか、抱き上げられてるから俺に拒否権はないんだけれどね。
この人の事は覚えている。
ハイエルフの村にいる村長。
村といっても、ハイエルフの収める地域は人数に対して広大なため大体は1人で生活していて時々助け合うと言った感じの気楽な関係の村だ。
そんな村長と俺は2人で暮らしている。
母と兄が2人、姉が1人いるらしいがみんな会ったことはない。みんなそれぞれ別のところに住んでいるらしい。
……とそんな事を言ってるうちに家に着いた。家といっても自然でできた神殿に近い。
儀式としても使われる神秘的な空間。
それが村長の家である。
「それじゃあ、また夕ご飯の時になー」
そう言って父親はまたどこかに行ってしまった。行ってしまったのだ……。
「え?なんでー?」
--ドサッ!ドサッ!ドサドサドサ……!
状況を掴めずに色々混乱していた時に、静寂を破るように大量の荷物が空から落ちてきた……。
……ん??空から大量の荷物?
--ピッカーーー!
一筋の発光物が空から降りてきたかと思うと、俺の肩に止まった。
「やっほーー!元気してるかい?」
「おい天使」
その一声を聞いた瞬間にすぐに状況を理解する。
体感的に先ほど。時間にしてはかなり時間が経っていると思う。
さっきまで会っていたように感じる小さくなった自称天使さんが俺の方に座っている。
……もしかしなくても今まで混乱していたのは十中八九天使さんのせいなのだろう。
「さ、殺気やめてね」
「無理ー」
色々聞きたいこともあるが、俺は怒っている。得意の風魔法と雷魔法の合成魔法をくらわせてみたい。
「ちょっ……、ちょっと!?そんな攻撃的すぎる魔法の素質授けたっけな?あ、いや、念のためしたかも!!ちょっとにげ……」
--ピカピカピッカーン!!
「どっかーん!!」
--ピヨピヨピヨ
天使の頭には無事ピヨピヨの輪っかがついた。天使さんは無事ご臨終したのだった。
「めでたしめでたし……」
「……じゃなーいっ!」
天使さんが飛び上がって抗議している。
どうやら、生きていたみたい。
中々丈夫な体のようだ。
「ハアハア……、転生してすぐの力じゃない……末恐ろしい子」
「あ、やっぱり俺転生してたんだ」
薄々そうなんじゃないかとは思った。
俺には前世と今世の2つの記憶がある。前世の記憶もなんとなくあるけれど、あんまり覚えられないのに、今世の記憶ははっきりと思い出せる。
その状況を考えてみたら、自ずと転生したなと言うことは分かった。
「そーそー、そうなんだ。それを伝えるために来たんだよ」
「へー。それはそれとして、天使さん。名前なんていうの?」
「ああ、そういえば名乗ってなかったね」
「うん」
「名前ないからね」
「あ?」
「ほ、本当だって!本当!だから、君がつけて」
「……」
嘘を言っているようには見えない。
本当に名前がないのだろう?
「良いの?俺で」
「まあ、名前なんて呼ぶ人いないからね」
「じゃあ、何でも良いか」
「え?」
「ナビで」
--ピッカーーー!!
ナビの周りが光った。
「うえええ!!もっとマシな名前が良かった!!」
「人選ミスだよね、どう見ても」
「ぐう……、まあ良いか、僕は今日からナビって名前だよ、よろしく」
ナビが明らかに不服そうに自己紹介する。
ちょっと申し訳ない事をした感じもする。
俺がさっきまでやっていた乙女ゲームの助かるサポートキャラの姿に似ていたんだ。そのキャラがナビって名前なんだよ。
まあ、いいか。
「じゃ、僕はしばらくやる事あるから!」
「えっ……!?頼れるお助けキャラじゃなかったの!?」
「ちょっと職務放棄してみたー」
「おいっ!」
「聞きたいことの大体はそこのカバンの山漁れば全部書いてあるから!じゃーねー!」
そっから--5年の月日が経った。
----------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます