第4話 俺様精霊のサラマンダー
-side ハッカ-
「よお!ハッカ!きたか!」
「村長!」
ハイエルフの村……、と言って良いか分からないが村は普通の村と比べてかなり違う。
まず、人は少ないが納める領地が広大だからだ。水の精霊ウンディーネ様が住む湖の地域、火の精霊がサラマンダー様が住む火山の地域、風の精霊シルフ様の住む森の地域、そして地の精霊ノーム様が住む地下を村の領土として、人間など他の種族が入れないように結界を貼っている。
それぞれのエリアだけでも国一つがすっぽり入るくらいの大きさをしているので、領地としては大体国4つ分と書いてあった。
それに対して、村に住むハイエルフは大体3、40人程しかいない。
必然的に俺たちハイエルフはそれぞれバラバラの場所で一人で過ごしてこうした日にたまに集まるという生活になっていた。最初の方、慣れるまでこの生活に寂しさを覚えたが、慣れれば案外気楽でいいとも思う。
『よお!元気してるか!?』
「--サラマンダー様!?」
『おう!俺様が今日の試験相手だ!!』
「……!?」
赤い髪に褐色のイケメン。
サラマンダー様は随分と偉そうな精霊だけど実際偉いので、態度としては身分相応なものだと思う。少なくとも俺たちハイエルフにとっては信仰対象だからだ。
それはそれとして、この5年間、なぜか分からないが俺は4大精霊全ての加護を貰っていた。村始まって以来の快挙らしい。
だから、こうして色々な村の試験に精霊様が自ら試験を行う。
「俺の試験ハードすぎるかも?」
『ハハハッ!何を言っているのか!我が弟子なら普通の試験を突破するだけだったら余裕だからな!今回の試験、難易度を跳ね上げさせて貰った!!』
「迷惑すぎる……、というか弟子になった覚えないんだけど?」
『む?なんだ?俺様の善意を無碍にするとでも言うのか?』
「い、いえいえ!そんなことは無いです!」
どうやら良かれと思って難易度を通常のものに比べて跳ね上げたらしい。
魔法の試験方法は主に基礎試験と戦闘試験だ。基礎試験では最低限身につけるべき魔法を見せて、魔力の使い方や威力、エイムの良さなどをチェックする。その場でアドバイスも貰えるらしいから、試験というよりは授業に近そう。
戦闘試験は対戦相手と戦って力を見るらしい。評価基準は全くの不明、とりあえず思考力とか判断力、忍耐力は見ているのだと思う。相手は精霊様なので勝てなくても当然のようだ。
「それじゃあ、基礎試験からやろっかー」
村長の第一声で試験が開始される。なんともゆるい感じの雰囲気だ。
……。
…………。
一通り魔法を見せたところで基礎試験は終了だ。アドバイスは特にないみたい。
大人もみんな、うんうんと頷いている。
「それじゃ、戦闘試験を開始するよー」
「はーい」
『かかってくるが良い』
--ピッカーー!!
そう言うとサラマンダー様がドラゴンの姿になる。人間の姿でも威圧感は凄いが、こっちの姿はズッコーーーン!っていう半端じゃない威圧感を放っている。
「両者位置についた事を確認、開始!!」
--ビュオオオオオ!
--サッ!
開始とともにドラゴンブレスを放ってくるサラマンダー様。どうにか避けれたが、5歳児相手に容赦なさすぎかも?
「えいっ!!」
俺はブレスを利用して風魔法で炎の進行方向をサラマンダー様の方へと変える。
風魔法で炎を加速させ、威力も高めて攻撃をお返しした。
『……!』
--ドッカーーーン!!
『やるではないか!!』
「全然効いてない?」
『いや、痛かったぞ!ガハハハハ!』
今の攻撃を受けて痛かったぞで済むんだもんなあ。ハイエルフの村の試験、勝たせる気なさすぎでしょ。
いや、そもそも上級精霊って神様の平均的なくらいの戦闘力は持ってるらしいから、神様と戦っているみたいなので当然なのかもしれない。それにしても、歯が立たなさすぎる。
「うーーん、倒せなさそう?」
『俺様を倒そうぞ1000年早いわ!』
「1000年経ったら倒せるようになる?」
ハイエルフは悠久の時を生きる。
1000年は全然生きているだろう。
『例え話だ。1000年でも無理だな』
「むーー」
普通に拗ねる。
元々、勝てるとも思ってないがこうなったらどうこうして勝ちたくなってきた。
むむ……、攻撃系は無理だから相手をコントロールして追い込む感じにしよう。
「バブル」
『む?ファイヤー』
手始めに周りに泡を沢山出す。
水属性はサラマンダー様の弱点だから、ピクッと表情が動いたが冷静に打ち消され対処される。
しかし、今のでサラマンダー様の攻撃範囲は狭まった。
「サンダーバインド」
『……!!』
雷の拘束魔法サンダーバインド。
ノータイムで拘束する。
『GRRRRRRRR……!』
「うーーーー」
サラマンダー必死に拘束を破ろうとしているが俺も必死に拘束を続ける。力比べだ。
「そこまで……!」
『ぐぬぬぬぬ……、俺様の負けだ』
「やったーーー!」
倒せてはないけれど、一定時間拘束した事により、勝ち判定にはなったらしい。
『強くなったな!ハッカ!!』
サラマンダー様が俺を抱き上げて肩車する。目線が一気に上がり視界も広がる。
--パチパチパチパチ!!
他のハイエルフたちも満足そうに俺たちの方を見て拍手している。
なんだかんだで、試験は突破したらしい。
めでたしめでたし。
今日はこれでお開きかーと思っているとサラマンダー様が思い出したかのように聞いてきた。
『そういえば、ウンディーネの奴がお前を呼んでいたぞ?なんかあったのか?』
「うーーん?あっ……!」
そうだった、この前一緒に遊ぶ約束をしてたんだった!
『その様子だと思い出したみたいだな。全く、あいつも世話が焼けるぜ』
その後サラマンダー様の背中に乗せてウンディーネ様がいる湖に向かうのだった。
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