メルヘン男子〜ひとりぼっちのハイエルフ生活だったので、精霊とスローライフを満喫します〜

ほのぼの村の西園寺わかば

プロローグ

第1話 キミ、暇そうだね

-side ハッカ-



「このカニが出てくるソシャゲ、ストーリーは良いけどガチャ排出率がなー、続編も解釈違いがあるし、やっぱり買い切りゲームの方がいいか……」



 --バタリ



 とある社会人の暇なある日、夜通しゲームをやっていた俺はそのまま気を失ったんだ。



 --ピカーー!!



 眩しい。意識がはっきりして最初に思った事だ。

 しばらくして光がおさまると、そこはまるでエデン。煌びやかな建物に綺麗な花があたり一面に咲いていた。

 俺の目の前には天使がいる。……自分でも言っている事はおかしいとは思うんだけど実際にそうとしか思えないほどの美少年だ。

 くるくるとした金髪にエメラルドグリーンの目、若干透き通った白い洋服に天使の輪っか、薄っすら発光している。放つオーラはまさに天使。

 驚いてしばらくぼーっとしていると、向こうが先に口を開いた。



「キミ……、暇そうだね」

「は?」



 美しい美少年の第一声、ど失礼。



「はっ……!?ごめん、つい本音が」

「もっと失礼だお前」



 全くもってデリカシーがないね。

 本当に、暇なのは否定できないから受け入れるしかないけれど。

 学生時代の縁なんて全部途切れた。

 社会人になって友達も特にいない。

 一人暮らしなので、休日は一人でゲームしている事が大半なのだ。

 最初の頃は親がいない寂しさも感じていたが、一人でいる事にも慣れてむしろ居心地の良さすら感じるようになった。

 慣れって怖い。



「あっ……!!いやいやいや、僕は別にキミに友達がいないからっていう事実を突きつけて、心の傷を抉りたかったわけではなくて、ただ客観的な事実を淡々と述べたかっただけで……」

「もう黙ってろお前」



 流石にキレた。

 滅多にキレない俺、カッチーン。

 きっとすごい表情で目の前の天使を睨んでいるだろう。

 ノンデリにも程があるだろ、この天使。



「あっ……、そーだよね、えっと……、あ!そーいえばだけどキミ、死にました!」

「あ?」



 --ズイズイズイッっと顔を近づける。

 テキトー言ってんじゃねえぞと言う顔だ。



「い、いや!本当なんだって、本当!キミ死んだから天国に来たんだよ!」

「……?」



 まだそんな冗談を言うのだろうか?

 この状況でそんな嘘信じる事があるのだろうか?こちとらそこまで純粋ではない。

 明らかに目の前の天使は嘘を言っているだろう。そうに違いない。そう思った。



「本当なんだって!!信じてよ!!」

「……」



 俺は無言でそっぽを向く。

 この人と話しても無駄だと思ったからだ。

 早いところ、上司を出してもらって元の場所に戻してもらおう。

 もし夢なら、それで覚めるだろうからね。



「あー!もう!流石にこの状況で上司を呼ばれるのは非常にまずい」

「心配するな、上司はみんな怖いもの」

「そう言うことを言ってるんじゃない!もうっ!本当だったらキミをこのまま神として迎えようと思ったけれど、頭を冷やして貰うために一旦地上に戻すよ!その際、ハイエルフになって場所も違うから、ちょっと今までの人間生活とは違うけど、しょうがないよね、ごめんね!」



 --ピッカーーーン!!



 再び眩しい光で目を閉じる。

 目を開けると、そこはど田舎の山だった。



「は?」



 ちょっ!あの天使!

 どこだここーー!




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