17 縛り系配信者


 

 

 ふう。食べた食べた。結構いろんな種類のお菓子があったんだけど、この世界にはお菓子の文化がかなり広がっているのかな? 全部美味かったです。

 私がお菓子を食べている間に、私の黒歴史の中の一つは話し終わったようだ。あれはね、しょうがなかった。ゲームの中くらい好き放題したいんだよ。許して。

 

 

「夢オチさ〜ん。そろそろ私の話はいいですよね? ギルドに入れてください」

 


 ゲームを一緒にしていた人は知っているとはいえ、そんなに暴露されるのも好きじゃない。それに私はそんな昔話をするために、ここに来たわけでない。今後の活動を決める上での重要なギルドに入りに来たのだ。

 


「おう、あたしは満足だ。でだ、シュッター、ニキス。入れてもいいと思うか?」

「俺はギルマスがいいと思うなら賛成だ。面白そうだしな。けど結局は、ギルマスの権限さえあれば強制的に入れれんだろ」

「カナタちゃんが信用してるし、いいんじゃないかな?」

 


 イケオジの名前がシュッターさん。お兄さんの名前がニキスさん。今後お世話になるかも知れん人たちだ。しっかり覚えておこうと思う。

 


「他のやつはレベリングとか行ってるから呼び戻すのはめんどくさいな。ということで、あたしが許可を出せば入れれる状況なわけだ。歓迎する、姫暴」

「だか〜ら! 姫暴呼びはやめてください!」

「姫暴、話聞いてなかったのか? ずっと姫暴呼びって言ってるだろ?」



 くううう。こういうふうにからかわれるから、あれは黒歴史なのだ。そんな二つ名が浸透してしまって、私は非常に不愉快です。

 こうして私は昔懐かしい夢オチさん。そして夢オチさん率いる【はっ! なんだ。夢か!】へと入ることになった。新しい出会いや冒険を送るゲーム生活の、始まりの鐘がなった気がした。





「後でギルドのルールを覚えておくことだ。さて今後のことで少し話がある。みんなも知っていると思うが、ゴミ泥棒クエストを全力で取り組みたいと思う。ギルドメンバー全員が修理金無料はかなりでかいぞ」

「ふっww」

 


 ギルドルールを覚えようと思ってウインドウから所属ギルドのページを開こうとしたら、急に、真面目モードのユメオチさんが現れた。重要な話だと思って耳を傾けてたら私が捕まらない限り終わらないクエストを全力で取り組んでいくと言い出すのだ。私はなんとか平静を保っているが、堪えきれなかったのかカナが少し笑い出した。

 というかまずい! いやー、夢オチさんの気持ちを知りたい。まさか、クエストで捕まえるべき対象が一緒に解決するための話を聞いているんです。



「どうしたカナタ? なぜ急に笑う? まて、なんか嫌な予感がするぞ? …………怪しいな」



 夢オチさんはこういうとこは勘がいい。昔にゲーム内で結構な時間一緒にいた私は分かる。だからこそまずい状況になる。現にカナが笑ったことで嫌な予感を感じ取り、少し考えて怪しいと結論づけた。 



「姫暴、マナー違反を承知で聞こう。盗んだな?」

 う、うぐ。やはりわかってしまうのか。夢オチさん的にはほぼほぼ勘でしか、割り出すことはできないはずなのに。女の勘は怖いとよく言われるが、今私はその考えを全力で肯定する派に回ろうと思う。



「ギルマス? 何言ってやがる?」

「ギルマスは何を疑ってるんですか?」

 

 

 シュッターさんとニキスさんはギルマスの言葉では察することができていないよう。

 マナー違反なので、馬鹿正直に答えを言う必要はない。だけど、これからのギルドに深く関わってくることで、これから隠すことで、私自身が苦しくなって来るかも知れない。言うべきだろうか?


 

 ええい、言ってしまおう!



「ふむ、姫暴すまんな。今のは忘れ――「盗みました」

「「「え?」」」

「あ、言っちゃうのね」

  

 

 あ、夢オチさんが話を変えようとしてくれてたのに、被ったぁーー! そのまま話さなければ無実の罪でいられたかも知れないのに!

 私が盗んだことを暴露したせいで御三方は固まっています。

 そしてカナは私が言ったことに驚きを隠せない様子。どうしてカナはそこまで驚いてるんですかね。カナのことだ、「いつもの私なら強引に話を打ち切って秘匿するに違いない」とか考えてたんだろう。いつもの私のことを見ていたらそうなるのは仕方のないことかも知れない。

 だけどこれは全てが私の妄想! カナはそんなこと考えてな…………いはずだ。


 


「うん、どうやってとかは聞かん。なんとなく察しがついてしまうが、聞かん。うちのギルドはかなり平均カルマ値が低い。あんまり心配はすんな」


 夢オチさんが優しさを出してくれて、聞かないでくれるようです。普通はかなり取り乱すんだろうけど、さすがはギルドマスター? 


 

「まあゴミ泥棒クエストは保留だ。まあ姫暴のためにシュッターとニキスを軽ーく紹介するか。シュッターは配信者やってるぞ。ニキスは一般人だ」


 ニキスさんの扱い雑! 

 

 で、シュッターさんは配信者なんだ……。え、まさか配信されてたりする?


「安心しろ。ギルド内では切ってる」

 

 私の不安を感じ取ったのか的確に言葉は発するイケオジシュッターさん。うーん、渋い。だがそれがベテランっぽさを出してて味があるね。


 

 その後はカナがシュッターさんの配信を見せてくれた。私が思ったのは、異質。その一言に尽きていた。



 ◆配信◆


 シュッターさんがどこかのダンジョンにパーティーで挑んでいる様子が配信されている。

 パーティー情報とかが抜けたりしないのかな? パーティーさんはそれもオッケイしてるのかな?


 

 モンスターが出てきた。人間の身体に頭は魚。人面魚ではなく、魚面人と表現した方がいいだろう。立って歩く、とてもファンタジー。


 パーティーは戦闘に移っていく。

 シュッターさんの武器はなんだろうとワクワクして見ていると、ベルトをガサゴソと触り出した。何をしているのかと思えば、次の瞬間には手に銃が握られていた。見たところ、リボルバー式。まさかこのゲームに銃があると思っていなかった。へえ、銃なんてあるんだね。特別な職とか、かな? 暇があったら後で実際に見せてもらいたい。

 

 まだ、この瞬間までは、普通の平和な配信だった。そこからが私が異質と感じ取った要因が詰め込まれている 


『【???】を発動。???(レベル???)』

『???が【???】を発動。


 分かるだろうか、この異質さが。おかしいでしょ?

 普通はログを見れば動画がなくてもある程度は当時の状況がわかる。けどこの配信は映像があっても、ログが意味不明すぎて頭がバグりそうになる。おかしい、おかしすぎる。


 この後もずっと???の表記が続く、ログはあったけど相変わらず何をして、何をされたのかが正確に理解できない。なので、映像で理解しないといけないのだが、映像だけではわからない部分が多すぎる。味方がどんな技を使ったのか、自分がどんな状態なのか、これではどの攻撃が有効かわからないし、ステータスを開かなければ、自分の残りHPもわからない。配信中出てきたモンスター全てがHP見えないなんてことはないと思うので、敵のHPゲージとかが見えなくする設定があるんだろうね。

 これはやばい。ゲーマーとして、シュッターさんを尊敬します。


 

 その後、しっかりとボスまで攻略していた。

 ……異質すぎる配信だったわ。


 ◆


「俺はダメージを長年の勘で掴んでる。だから全部を秘匿表示にしても気にならん。後は配信してる都合上どうしてもギルドの情報漏洩に繋がるから、こういう形でやらせてもらってる。」

「あたしが強制したみたいに言うんじゃねえ! 元から縛り配信で有名人だろ! シュッターは」



 すごい、凄すぎる。これでも私もゲーマーだ。凄さは身に染みて理解できる。そして、シュッターさんはドMだって、心に刻んでおかないと。

 

「明日の予定について話しときた――――「あ、眠いんで寝ます。おやすみなさい」


「そういうとこだぞ、姫暴ーーー!!!!」


 おやすみなさい。 


 

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PS人外のクソゲープレイ記〜ネタ職【掃除屋】になったけどいつものように悪役ムーブします 残照波 @zannsyouha

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