自分は、純文学も大衆文学も嫌いです。

あばら🦴

自分は、純文学も大衆文学も嫌いです。


 自分は純文学が嫌いです。


 つまらなくても「文芸だから」「理解しにくいから」と逃げ道を用意しているところが嫌いです。そのくせつまらないと感じたこちらを見下す姿が気に入りません。


 文芸だからってつまらなくしていいと思っている、その面白さに対する舐めた態度が嫌いです。

 理解しづらいことを表現したかったのなら理解しづらい作品になるのは仕方の無いことだと思います。しかし、理解されるように努力することを怠っている誠意の無さが嫌いです。


 繊細で美しい文章を書きたい、表現したい中身がある作品を書きたい、それは結構なことです。その良さがあるのは理解しています。

 でもだからって、面白くできないわけではないじゃないですか。

 中身がどうだ、美しい文章がどうだ、と言われましても、それがあるせいで外側を面白く飾れなかったわけではないじゃないですか。

 面白くするやりようはあったはずではありませんか!


 見てくれを面白くできなかった書き手側のセンスの問題なのに、つまらないと感じたのは読者が純文学の読み方を分かってないせいにしているところが嫌いです。

 純文学作品の売れ行きが落ちているようですが、当然ではありませんか。純文学の読み方を分かってない読者を手放したのは自分たちなのですから。

 自分たちは読者を相手にする表現者な以上、寄り添うのは読者ではなく自分たちの方からだというのに、読者から寄り添ってほしいと要求している姿が嫌いです。


 そうやって面白く感じさせることから逃げておいて、何故か達観している態度が嫌いです。

 芸術家を気取ってはいますが、どれくらいの人数を満足させてどれくらい喜ばせたかで言えば大衆文学に完敗しているのに、何故か達観している態度が嫌いです。

 悔しがって成長しようとしないのが嫌いです!


 人を満足させることよりも芸術性に価値を感じているところが嫌いです。世の中への貢献度を価値とするなら、芸術性より多くの人の満足の方が価値があるのではないでしょうか。

 というか、芸術性と人を満足させることはやろうと思えば両立できるのに、放棄しているところが嫌いです。

 そのくせ俗っぽい評価なんて気にしない素振りを見せておいて、なんだかんだ仲間と群れて評価されたがる、その一貫性の無さが嫌いです。


 純文学の愛好家も嫌いです。

 内容は大して面白くないし、作品に潜めた主張だって良く考えれば普通のこと言ってて大したことないのに、紐解いた達成感で評価を上乗せしているところが嫌いです。


 文章が綺麗という表現が嫌いです。そうやって「安牌にこう言えばいいや」と考えている態度が嫌いです。

 文章が綺麗だったらそれだけで満足する評価の甘さが嫌いです。その甘さが純文学に緩みを産んでつまらなさを助長させていることに気づいてないのが嫌いです。


 自分はそんな純文学が嫌いです!




 自分は大衆文学が嫌いです。


 以前どこかで得たような感覚しか与えられないから嫌いです。パターン化された中身の無いハリボテみたいな作品が嫌いです。そのくせ数字で見下してくる態度が気に入りません。


 見てないうちからすでに味わったような作品ばかりだから嫌いです。オリジナリティを気取っているけど、結局はどこかの誰かの真似をしているのが嫌いです。

 作品に込められた作者の表現したいことが無いのが嫌いです。人気のジャンルにあやかって数字に心を売ったのが嫌いです。

 数字にこだわること自体はいいんですが、それで出てくるものが見た事あるようなものなのが嫌いです。


 実際にそれで数字を得られるのが嫌いです。

 中身なんて無いのに手放しで喜ぶ読者が嫌いです。

 中身ではなく群れている感覚に酔っている読者が嫌いです。結局ブームが過ぎ去ると離れて忘れていく、そんな中身じゃないところで評価している姿が嫌いです。

 それで得られた評価と数字にこだわっている作者が嫌いです。


 作者も読者も中身なんて二の次にしていいと思っている、そんな面白さに対する舐めた態度が嫌いです。

 なまじ中身の無い小説を作っているのに偉そうに上から創作論を語っているのが嫌いです。数字があるから自分は偉くて教える側だと思っているのが嫌いです。

 その創作論だって、読まれる方法とか、読者の人気とか、結局中身じゃないことばっかり語っているではありませんか。

 どうすれば面白くなるかだったり作品の技法や作り方を語ってはいないじゃないですか!


 そういったハリボテを崇拝している読者が嫌いです。中身じゃなくて、いつか得た感覚と同じ感覚を得られたらそれで良いと思っている節が嫌いです。

 そのせいで同じようなものばかりが生み出されている惨状が嫌いです。どこを見渡しても中身の無い作品ばかりが溢れてる惨状が嫌いです。

 流行りにどれだけ乗るかというゲームと化してしまっているのが嫌いです。


 作品の独自性が無いことを悩みさえしないのが嫌いです。ただ流行りのジャンルの一部分を少し変えるだけという大喜利状態になっていて面白くありません。

 数字さえあればそれでいいと思っている態度が嫌いです。

 そうするとこちらが読んでも印象に残らなくてすぐに忘れそうになります。そのくせ、数字があるから面白い作品だとこちらを騙してくるのが嫌いです。


 その数字を与えている読者も嫌いです。

 ただ人と同じものにたかりたいだけの読者が嫌いです。

 共感とかいう評価基準が嫌いです。

 本当は大して面白く感じてないのに人と群れた空気感や人と同じものを共感したいという欲求で作品を褒め出すのが嫌いです。

 本当は大して面白く感じてないからブームが過ぎ去ったらすぐに新しいブームに飛びつく薄情さも嫌いです。


 自分はそんな大衆文学が嫌いです!




 自分は昔から「とても満足した!」と思える作品に出会いづらい人間でした。これは自分の感性の問題です。純文学にも、大衆文学にも、流行り廃りも関係なく、世の中の作品のだいたい九割にあまり心からの満足を感じられませんでした。

 だから自分で創作するしかなくなったのです。自分から動かないと自分が満足できる作品がいよいよ無くなりそうでしたから。


 どうして大半の作品に満足しないのかというと、自分は面白さの力がどれほどすごいのかを知っているからです。

 本当の面白さとは、それこそ、喰われるような感覚がします。

 自分の全てが丸呑みにされて、全身をその作品で浸されて、かといって抜け出せなくて、そうして作品にドロドロと消化されていく。面白い作品とは向こうから喰ってかかるパワーがあります。

 そういった面白さの破壊力を自分は知っているから並大抵のものだと満足できないのです。


 そんな自分は、純文学も大衆文学も嫌いです!

 面白さを舐めているのが嫌いです!面白さのポテンシャルを甘く見ているところが嫌いです!

 自分が憧れた、見惚れてしまった、囚われてしまった面白さというのはそんなものじゃない!もっとやれるはず!面白さの破壊力はもっともっとあるはずですから!

 互いが互いを見下してそうなのも嫌いです!

 自分から言わせればどちらも同じですから。


 結局のところ、どちらも一方を捨てています!

 中身や文章が売りの純文学はエンタメを捨てている!

 エンタメや数字が売りの大衆文学は中身を捨てている!

 だから不完全!

 だからつまらない!

 だから満足できない!

 だからどちらも自分は嫌いです!


 それに何より、そんな作品が自分の作品より読まれている現実が一番嫌い!

 大っ嫌い!大っ嫌い!大っ嫌い!

 今この部分を読まれている方、これを妬みだと思いますか!?

 思うなら思っててください!

 実際妬みだから!


 くそっ!くそっ……!

 何が純文学だ!

 面白くないのに自分より読まれやがって……!

 何が大衆文学だ!

 中身が無いのに自分より読まれやがって……!


 くそっ!くそっ!くそくそくそっ!!

 今に見てろっ……!

 自分は純文学にも大衆文学にも行かない!

 どっちもだ!

 ちゃんと文章の綺麗さや作品の中身を作り込んで、なおかつ外側も面白く飾る!どっちも両立させる!その領域に自分はたどり着く!

 読んでて楽しい純文学!

 考察のしがいがある大衆文学!

 何も考えずに読んでも「面白いな!」と思うことができて、さらに伝えたいことを考えると「こういうことなんだ、なるほどな〜」と感じることが出来る小説、それを生み出す!


 それが出来る実力を身につけてやる!

 何故ならそれこそが自分の満足する作品だから!


 そのためには……、純文学も大衆文学も知らないとならない!嫌いなふたつのものをよく知らないとならない!

 何故なら言うて自分も自分が満足するほどの面白い作品を作ってるとは言えないから!


 そのためなら辛酸をいくらでも舐めてやる気持ちだ!

 

 読まれず評価されないくらいじゃくじけません!


 今のうちに見下してな!

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自分は、純文学も大衆文学も嫌いです。 あばら🦴 @boroborou

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