第二章 ドリームフェザー 崩壊まで四日

第二章 ドリームフェザー 崩壊まであと四日


 薄紫色ショートボブであり、死神のフードとレオタードを着た中学生の女子〈不思議原 音々〉が慌てて、走っていた。

 その理由は彼女が持っている紙である。

 優華と安楽満がいる部屋へ入った。


「ママ!! 優華さん!! 大変だよ!! ―――」


 慌てた顔で音々。しかし、二人の平常運転に彼女は慌てる心が落ち着いた。

 そう、寝起きなのだ。それも何も着ていない状態で。それに優華の両腕は真っ黒で禍々しい腕であり、体には大量の古傷が浮かんでいた。音々はこういうのは慣れているのか。すぐに二人に声かける。


「あれ? 音々? どうしたの?」

「オレ達。全く眠れてねえのに~」

「そ、それよりも大変だよ~。この紙みて!!」


 寝ぼけ眼で二人は音々が差し出した紙を見る。すると、二人は目を大きく見開いて、驚き始めた。


「「ゴ、{ゴールド・ラッシュ}!!!」」

「ば、場所は〈金銀森山〉じゃねえーか。クエスト達成条件はキング・ゴーレム 神種を討伐かー。ありがたいクエストじゃねえーか!! 報酬は130万ツカじゃねえか!! ついでに金銀は掘ったら、そいつの物とははいいじゃねえか。」

「偉いわ!! 音々!! これならこのギルドも立て直すことができそう!」


 紙を見た優華と安楽満は大きく喜ぶ。

 優華は偉く興奮し、安楽満は音々の頭を撫で始める。

 音々は嬉しそうに安楽満を見る。

 しかし、音々はあることに気づき、二人に「でも、これ他の人たちが見たら大変だよ?」と気になった顔で聞いた。

 すると、二人は“ないない”と言わんばかりの顔でこんなことを言い始める。


「大丈夫よ。音々。このクエストは誰も参加していないの!」

「なんせ、このクエストは〈魔種〉と〈神種〉がいるからな。多分並大抵の戦士じゃ、無理無理!!」


 それを聞いて、音々は納得した。


 魔種。魔法宝石や魔水晶を食って、その力を得たモンスター。魔法の力や攻撃の威力も上がっており、体の到る所に結晶が少し生えている。

 彼らから取れる〈魔物結晶〉と〈魔物宝石〉が取れ、これらは武器や魔法を更に強化することができる。


 神種は大量の水晶や宝石と魔種たちを食ったことで成長を遂げたモンスター。特殊の能力を使って、相手を苦しめることもある。動作として、力を溜めることもあるが、その後水晶を使った攻撃をしてくる。神種を倒すと〈神結晶〉や〈神宝石〉が手に入り、武器を更なる強化につながる。


 すぐに三人は出発の準備へ向かった。

 その紙の依頼主を見て、優華は納得する。それは優華たちのお得意様であった。

 すぐに三人はバイクに跨り、エンジンを起動して、すぐに発進する。

 ギルド管理警察たちに見限られたといっても、まだ没収されるほどの差し押さえはない。 

 というかギルド管理警察は監査やマル暴担当で、その資金を渡すのはその上のギルド管理資金担当である。

 優華たちは目的地である金銀森山まで向かった。ここから少し遠めなので遠くの場所でも快速に行けるロード〈高速ロード〉へ向かった。

 高速ロードは現在で言う、高速道路だ。時短で行ける分。モンスターたちが襲われることが多いため。戦士以外はあんまり使われていない。

 え、何で警備しないのかって? そもそも、あそこは戦士たちがバイクやカーという車に近い乗り物で進んで、ほとんどの戦士はカーに兵装を付けて、モンスターを迎撃している。

 当然優華たちもバイクの兵装を携えている。音々はボディに大鎌六つが備わっている。

 安楽満のバイクは兵装はないが、安楽満はいろんな武器を習得をしているため。左手にサブマシンガンを持っている。

 最後に優華だ。少し特殊なバイクで生きているバイクだ。八本の爪と前に魔力連射銃が備わっている。優華の方は前のめりでバイクのアクセルを踏み始める。

 それに兵装も自動で発射される。優華は辺りを見渡す。ここの場所は整備されているが、相変わらず警備がない。

 正直優華は今の警察がかなり大っ嫌いだ。

 街のみんなを助けない癖して、誤認や汚職に対して、平気でやる奴らだ。優華はそんな奴らを見ると、反吐が出る。

 まあ、処刑課の政府は元ヤクザであるが、筋が通っている仁義者だ。

 彼も昔大切な家族と恋人を殺されており、ヤクザになったけど、実力がなく。カリスマだけある感じである。

 そんな中。出会ったのが優華だ。彼は優華の力を見込んで処刑依頼を頼んでいる。

 優華は前を見て、思い出す。すると、そこに翼が生えた鳥の悪魔〈ガーゴイル 通常種〉と結晶が少し生えた鳥の悪魔〈ガーゴイル 魔種〉がやってくる。

 奴らが前にやってきて、ガーゴイル 通常種は風魔法の初級【ウィンド】を唱える。

 ここの世界は空気中と結晶から出る魔素が出てくる。

 それを詠唱をすると同時に魔素たちが詠唱者に近づいて、集まり始める。

 そして、詠唱が完了すると同時に魔法を飛ばし始める。

 ただし、魔素がなくなることはまずない。

 魔素は無限に分裂するからだ。

 風の球を作り、それを飛ばし始める。

 しかし、優華は一旦ブレーキで避けて、連射砲で相手を撃ち貫いた。

 ガーゴイル 魔種は突進するけど、優華が乗っているバイクから出してくる爪で斬り裂き、安楽満もサブマシンガンで相手を貫いた。

 相手は消滅して、魔物結晶が落ちた。すぐに安楽満が回収する。

 ガーゴイルたちも爪で攻撃するけど、音々の六鎌と優華の八爪で斬り裂かれ、消滅する。

 殲滅したらしく、すぐに三人は途中にある。休憩所へ向かった。

 休憩所に向かうと黒いフードとアイテムがいっぱい詰め込んだリュックを背負ったマスクを付けた中年男性がいた。


「お、〈がま口〉じゃん!!」

(お、優華君。久しぶりだね。ここに休憩をしたというのは。僕の依頼を受けに来たんだね)

「ああ。どうしても、金が必要だからな」

(そうだったね。君のギルドは今ヤバい状態と聞いた。みんないなくなって、ギルド長の〈伊達 秀〉君の秘書〈イエス・マリア〉君が行方不明になったんだってね)

「ああ。そのおかげであいつは腑抜けになっちまってな。今じゃ、ずっーと、部屋に引き込まりやがった」


 優華とがま口(小声でしか喋れない)はこれまでの経緯を話した。なぜドリームフェザーが廃れたのか。

 事の発端はギルド長の秘書であるマリアが突然行方不明になったことだ。

 心当たりは一つだけある。秀ギルド長の無茶な要望だ。マリアは何とか止めようとしたが、振り向きをしない。

 まるで誰かに操られているようだ。優華も何か気になっていた。まるで某星の戦士に出てくる全部とある機械に命令されて動いている社長みたいな感じだと。

 そのせいで、他の奴らも愛想尽かして、去った。それだけじゃない。ギルド長は指示厨となり、一切加入することはなかった。

 まあ、仕事は回るから大丈夫だけど。

 優華は頭を搔きながら言うと、音々ががま口に抱き着く。


「がま口おじさんこんにちわ!!」

(おやおや音々君。元気そうで何よりだ。特別サービスだ。受け取れ)

「わーい! ありがとう」


 無邪気な音々にがま口は特別サービスで飴玉をあげ、音々は大きく喜んだ。

 すぐに三人は休憩場を後にする。目的地がついたようだ。

 蜃気楼で見えないがここが金銀森山だ。

 ここにはたくさんの金銀が埋まっている。しかし、凶暴なモンスターたちの根城な為。

 迂闊に入るとモンスターたちに襲われて、関の山である。しかし、優華たちは歴戦の猛者であり、堂々と入ることができる。

 金銀森山の中へ入った。

 森の中。正確的には地面が少し黄色や白色と輝いており、掘り当てれば金銀が出そうなものだ。

 しかし、スコップやピッケルが必要であるが、優華たちには更にいい物を携えている。

 それは〈採集デバイス〉というスマホ型の端末だ。

 採集デバイスは堀り、魔物素材を採集することができる。

 採集した後。排出ボタンを押せば、レンズからアイテム素材が出てくる。

 すぐに優華と安楽満は採集デバイスを起動して、レンズから通して、金色の土を採取する。

 さらに金色に光る岩を優華は採取する。

 そして、案の定。金と銀の原石を掘り当てる。音々も無邪気に採集する。

 出たのは金の原石だ。音々は目を大きく輝かせる。

 だけど、金と銀のゴーレムたち〈金岩・銀岩ゴーレム 魔種〉が襲ってきた。

 上質な金と銀を食っているのか。体もかなり煌びやかだ。

 優華は大槌を作り、安楽満も昔アマテラスからもらったナックル〈太陽神の陽拳〉を装着して、構える。

 けど、先に大鎌を持って、浮遊して、襲い掛かる音々が攻撃する。


「【脆くなっちゃえ!!】」


 無邪気な笑みで大鎌で斬りつけ、相手の体は脆くなり始める。

 その間。優華がハンマーで叩き潰し、安楽満のナックルで片方の銀色ゴーレム 魔種を倒した。

 やはり、優華たちのような凄腕なら簡単であるからだ。

 大量の金銀を集める中。地響きが鳴り始める。

 そう、メインターゲット。水晶が生えて、金色と銀色が混ざった岩を纏ったゴーレム〈キング・ゴーレム 神種〉が歩いているからだ。

 水晶が光り輝き、魔種たちの力を増加。さらに金銀の岩が輝き始める。

 これはキング・ゴーレム 神種の能力であり、金銀・ゴーレムが持つ、水晶と金と銀の価値が上がり始める。

 力を溜めたキング・ゴーレム 神種。しかし、安楽満が地面を殴り、相手の行動をキャンセル。

 さらに音々の猛毒と防御を低下する斬撃を与えて、相手の肉質を柔らかくさせる。

 安楽満が剛撃で二体の魔種を打ち砕いた。

 最後に優華が大槌に獄炎を纏い【獄落炎】でキング・ゴーレム 神種の頭を破壊。顔の半分が崩れ去り、神結晶と金銀が落ち始める。

 さらに優華はハンマーでアッパーして、再び獄炎を纏った後。急降下に落ちて【獄流炎星】で、相手を倒した。

 これでメインクエストは達成し、すぐに採集デバイスでスキャン。スキャン内容を見、優華は頷いた。その内容はゴーレムたちの素材と金と銀である。

 その後がま口は見えないところからやってきて、鑑定する。


(うん。キング・ゴーレム 神種の鉱石だね。この一部は僕がもらっておくよ。そうだ。この素材たちは君にプレゼントだ。

 それにほら。報酬だ。受け取ってくれ)

「おお。ありがとうな。こいつらも回収して、売ってもいいか?」

(ああ。問題ないよ。これはとある職人に頼まれた品物だからな)


 報酬を受け取り、がま口さんは依頼の訳を伝えた。

 優華はそれを聞いて、納得する。

 すぐに三人は金銀を集めて、何でも呑み込む龍〈イーター・ドラゴン〉の胃袋を乾かして、それを袋に加工したアイテム袋へ入れて、この場を後にした。

 メイン・ストリートへ向かった優華たちは鉱石専門店へ向かい。早速金銀を売り始める。

 鑑定士は虫眼鏡を見て、大きく納得したのか。優華に。


「優華さん。金銀森山のところから取ったみたいだね。あそこは上質で価値があるんだ。今日は奮発に1500万ツカを渡そう」

「ああ。ありがとうな」


 優華は少し笑って、鑑定士にお礼を言った後。アタッシュケースに金を入れて、この場を去った。

 後にそれを買い取りたい人が沢山来たようだ。


 優華が自室へ入って、休憩していた頃。誰かがノックをする。それは水色のロングヘア―の前髪を縛っている科学服の女性〈平田 文子〉であった。


「優華。出番だよ」

「おお。いつものだな」


 文子が言う出番とは、優華が言ったいつものとは。この先で分かったことだ。

 優華はすぐに準備をする。奴らを葬るために。


 魔物図鑑


 魔種


 世界に生えている魔水晶や魔法宝石を食べて、成長したモンスター。通常種とは違い、魔水晶のおかげで能力があがっている。

 倒せば〈魔物水晶〉と〈魔物宝石〉が取れる。武器の強化にも使われる。


 神種


 魔水晶や魔法宝石、それに魔種たちを共食いした結果。進化したモンスター。様々な能力や飛躍的に上げた能力で戦士たちを襲い掛かる。

 倒すと〈神水晶〉や〈神宝石〉を落とし、それらが武器の更なる強化にもつながる。


 世界用語


 ツカ


 この世界の通貨。白磁=一ツカ、胴=10ツカ、真ん中に穴が入った銀=50ツカ、銀=100ツカ、金=500ツカ 千から万は札束である。


 採集デバイス


 ギルドが支給するスマホ型のデバイス。掘りと魔物素材でスキャンして、はぎ取ったり、掘るとその素材アイテムをその中で保存することができる。その内容を見ることができる。


 魔物図鑑


 ガーゴイル 通常種 属性 風


 鳥と悪魔が合体したモンスター。飛びながら、魔法である風魔法を放ってくる。


 ガーゴイル 魔種 属性 風


 ガーゴイルの強化版。風魔法が少し強力になる。


 金・銀ゴーレム 魔種 属性 地


 金と銀を大量に食ったため。成長を遂げたゴーレム。倒せば大量の金銀が手に入る。


 キング・ゴーレム 神種 属性 地


 金銀の鎧を纏った水晶が生えたゴーレム。特殊能力は味方の攻撃力アップと金銀ゴーレムたちが持つ金銀のグレートアップだ。

 グレートアップした金銀はかなり価値があるけど、キング・ゴーレムを倒してしまうとグレードダウンするため。倒すなら金銀を倒してからにしよう。


 ドリームフェザー崩壊まであと三日……。

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