第四話 ドリームフェザー 崩壊まであと二日

第四話 ドリームフェザー 崩壊まであと二日


 優華と安楽満は急いで、ギルド長室へ向かった。

 その扉は既に開いており、もぬけの殻だ。

 本も服も彼が愛用していた盾や武器も消えていた。

 唯一残っていたのは手紙と召喚陣のデバイスだけであった。優華はその手紙を広げて、読み始める。


 【もう、このギルドには要はない。解散とする。金は私がもらう】


 無責任且投げやりの内容な為。優華はその手紙をビリビリに破いた。

 すると、今度は安楽満のスマホが鳴り響いた。

 すぐに安楽満はスマホの通話ボタンを起動して、音々と会話する。

 さらに安楽満は大きく驚いた。

 通話を終わらして、安楽満は優華に焦った顔で言う。


「た、大変です!! 優華さんと私、音々が稼いだツカも、あの依頼で手に入れた金銀もすべてなくなったようです!!」

「はああ!!」

「それにアイテム貯蔵庫も全部なくなったようです!」


 そのことを聞いて、優華の怒りの炎がメラメラと燃え上がり始めた。

 これまでずっと、引きこもっていたくせにいざとなると自分たちが折角稼いだツカや金銀がすでに持ち去られていた。

 それだけではない。なんとアイテム貯蔵庫の残り僅かのアイテムも消えていったそうだ。

 すぐに優華はこの場を後にして、バイクの格納庫へ向かった。

 どうやら、バイクたちは無事だ。それにバイクを奪えば、警報が鳴るから奪うことができなかったのだろう。

 その代わり、ギルド長が使っていたバイクは消えていた。すぐに優華は文子に連絡する。


「おい! 文子! 秀の野郎が持ち逃げしやがった。一緒に探してくれ!」

『なんだって!! わかった! すぐに出撃する』


 文子は自室からブースターを付けて、屋上に上がるとブースターを起動して、空へ飛んで行った。

 三人はバイクを起動して、進み始める。

 さらに優華はとある人間に連絡する。それは今も残っている〈尊 スサノオ〉という女性だ。


「優華殿。何かあったので申すか?」

「おお! スサノオ! よく聞け!! 秀ギルド長が金とアイテムを全て持ち逃げした。お前は耳と嗅覚で探してくれ! 今迎えに行く」

「は! 承知!!」


 インカムのスイッチを切った。橙色の髪で目に包帯を巻いた侍の恰好をした女性〈尊 スサノオ〉がたっていた。

 目は見えないが、その代わり、耳と嗅覚で生活している。

 あたりを見渡し。すぐに歩き始める。一方で文子は空で秀を探していたが、バイクも持っていないため。徒歩だ。

 けど、その後ろから優華と安楽満、音々のバイクがやってきて、コードでスサノオを絡めて、走った。


「かたじけない」

『大丈夫だ。オレたちも追っていたところだ』


 申し訳ない顔でスサノオは謝る。優華は氷の顔でスピーカーを通して、スサノオと会話する。

 一方。文子はバイザーを付けて、辺りを見渡す。

 見渡すととある場所に秀ギルド長がいた。

 それは廃れた教会だ。文子はすぐに優華に連絡をする。


「優華! 聞こえる! どうやら秀ギルド長はそこにいるみたいだ! 今位置情報をみんなに送るよ!」


 位置情報がみんなのバイクのナビに出てきた。三人はそれを確認した後。すぐにバイクを発進させる。

 廃れた教会。そこはかつてカルト教団たちがヤバい魔物を作り出したという噂が流れていた場所だ。

 まさかここで魔物を作っているのかと思うと急ぎたくなる。

 すぐに五人はその廃れた教会へ入った。すると、その中から男性の悲鳴が聞こえた。

 優華は思いっきり、ヤクザキックでドアを破壊して、すぐに向かった。

 中から大量の嫌な臭いが漂い始める。血やよだれの臭い。それに黄色い液体や白い液体が大量に飛び散っていた。

 安楽満は音々を覆いかぶせ、鼻の利くスサノオは右腕で覆う。

 こういうことになれている優華はずけずけと入る。奥へ向かった優華たちはその場所を見ると、そこには時すでに遅く、部屋は誰もいなかった。

 その部屋にはどす黒い赤い血で描かれた魔方陣が描かれていた。

 優華と文子はそれを調べる。すると、優華は虫唾が奔る顔で残りの三人に言った。


「大変だ……。これは魔物転生だ。野郎。ドングと手を組んだな……。オレが倒しても倒しても懲りてねえ……」

「ど、ドングって……。あの魔物を信仰している者たちのことですか?」

「ああ。この魔方陣は人間を魔物に変える恐ろしいものだ」


 優華の説明でゾッとする安楽満。その隣で恐怖で震え、安楽満にしがみつく音々。


 ドング 魔物たちを信仰しているカルト教団。魔物たちの信仰のためなら、どんな手段でも躊躇わない教団である。

 例えば、おいしい話(金や女性、地位)を持ちかけて、教団員として入信。金を巻き上げて、洗脳。家族や友人の縁を切り、魔物との交尾やら魔物の御飯としての生贄を平気でやる集団である。

 もっとも最悪なのはこの魔方陣だ。この魔方陣は優華が言った通り、人間をモンスターに変えて、自分たちの考えが正しいことを証明するために使われる。

 そして、子供やか弱い女性を拉致。さらには使い物にならなくなった女性や子供を魔物に転生する。


 文子は気になったことを優華に聞いた。


「でも、何でドングと秀ギルド長は……」


 その問いに優華はあきれたような。おそらく優華は秀ギルド長に対して呆れる。


「おそらく、秘書マリアを疑似餌にしたんだろう? 奴らは入信のためならどんな手段も躊躇わない奴らだからな」


 優華はイラついているのか。頭を掻き始める。

 しかし、これでは捜索しても意味がない。一同はすぐにここを後にした。バイクを起動して、スサノオを乗せて、ギルドへ行こうとする。時間は次の日の朝だ。

 優華たちはすぐに自室へ向かった。

 しかし、優華たちは知らない。なぜなら、やばいモンスターがやってくることを……。


 ドリームフェザー崩壊まであと一日……

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