第3話 糺《キュウ》の章
ギチギチと頭が締め付けられて痛い。
呼吸もままならずに息苦しい、
何より……
こんな訳も分からないまま死にたくはない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたく……
ない!
そんな
気付けば狭い空き地にポツンと佇む小さな
「大丈夫ですか?」
訳が分からず呆然とする
「……うぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 血!
堰を切ったように
「大丈夫。大丈夫ですよ? もう大丈夫。とりあえず……落ち着いて話しましょうか?」
絶叫し、喚き散らす
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「……やはりそういうことだったんですね」と、一通り
ソウイウコト……?
「あなたは
イミガワカラナイ
「僕だって意味は分かりませんよ? 本来、怪異とはそういったものです。意味もなく、訳もなく祟る──」
丸眼鏡の男が言い終える前に、「そんな! そんな説明で納得出来るわけがないだろう!? 確かに私は今まで家の中にいた! 家の中で化け物に喰われそうになっていた! それがなんだ!? 何故私はこんな何も無い空き地の
「まあまあそう怒鳴らずに……ね? ひとまずは僕の話を聞いて貰いましょうか。僕が話している間は黙っていて下さいね?」
そう言って丸眼鏡の男がふらふらと歩きながら語り始める。それがなんだか小馬鹿にされているようで──
「そもそも……そもそもの話をしてもいいでしょうか? あなたは四月一日の夜に女性を殺してしまったかもしれないと先程言いましたよね? ですが無理……なんです。あなたには殺すことは出来ないんです。何故なら──」
「
それに対して
「僕も『はぁ?』ですよ。家は取り壊されたはずなのに、
そう言って丸眼鏡の男と共に、
「な、なんだこれは……ち、違う! ここじゃない! ここからでは部屋が見えない!」
「この辺りは四十年前から景色が一変しているんですよ?
「目の前の電信柱をじっと見つめていたんです」と、丸眼鏡の男が言う。
「電信柱を凝視する不審者が現れるのはこの辺りでは有名な話らしいですね。それと併せてあの空き地の社の前で、
丸眼鏡の男が色々と語ってはいるが、もちろん
「なんだ……? どういう……ことなんだ……?」
「さっきも言いましたが……僕だって意味は分かっていません。ですが僕が調べた結果を元に、無理やり今回のことを説明するとすれば……」
四十年前、ここで殺人事件が起きた。両親を早くに亡くした若い女性が一人、家に押し入った男に乱暴されて惨殺。そして──
「だめだ……だからなんなんだ……? 訳が分からなさ過ぎる……」
「つまりこういうことですよ?
「見ただけで祟られてしまう──」と、丸眼鏡の男が空き地を見やる。
「おそらく複雑に絡んだ穢れは様々な事象を起こすのでしょうね。忌々しくも凄惨な事件を想起させ……事件の犠牲となった美しい女性に情念を抱かせ……最終的には……」
「がぶり──」と言って、丸眼鏡の男が
「ですが間に合ってよかったです。やはり放ってはおけないのでここに来てみたら……あなたが空き地で白目を向いて
「どうでしょう」と、丸眼鏡の男が柔らかい笑顔を見せた。
「なんで私……だったんだ……? 何か理由……が……?」
「さあ? なんででしょうね? 波長でも合ったんじゃないんですか? となれば……この先も
「そんな……そんな理不尽な……」
「何を言ってるんですか?
「そんな……ものか……?」
「そんなものです」と言って、丸眼鏡の男がカチャリと眼鏡を上げた。
「ああそうだ。大切なことを忘れていましたね。僕の名前は
「私は……私の名前は
それを聞いた丸眼鏡の男──
「そういうこと? どういう意味だ? 私の名前がなにか……」
「
「確か私の家は曾祖父が茨城出身だ。というか
「僕ですか? ただの知りたがりの一般人ですよ? どうも気になったことを放っておけない質でして……苗字に関しては前に珍しい苗字を調べることにハマっていた時期があったんです」
「それで……? 茨城となにか関係があるのか?」
「先程僕は『
「そんなのこじつけだろう?」
「いえいえ、非論理の中に存在する論理性……」
「これは調べがいがありますね」と、再び
これが
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最後まで目を通して頂き、誠にありがとうございます。実はこのお話に出てくる鷹臣と倫正なのですが、私の別作品【忌女の纒はる穢れ森】には
それではまたどこかで
鋏池穏美
夜刀の待ち侘ぶ禍つ家 鋏池 穏美 @tukaike
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