第4話 本当の価値とは?

 女は眉を寄せる。


「もしかして……。あなたが私のレアリティを上げたの?」


 やれやれ。

 詳細を聞くのは面倒だ。


 ベッドの中で話すのが手っ取り早い。

 俺のことを好きになれば嘘なんかつかないだろうしな。


 俺は自分の体にレアリティアップ星2を付与した。


 さぁ、俺のことを好きになれ!

 その力を手に入れた詳細を聞き出してやる。


 すると、彼女の後ろから、別の女が俺の方へとやってきた。


「付き合ってください」


 おかしいな?

 彼女が俺のことを一番最初に見たはずなのに、俺のことを好きにならないだと?

 別の女に効果が出ている。


「もしかして、能力を持っている者には効果がないのか?」


 女は苦笑した。


「それはそうよね。能力を持っている者に効果があったら意味がないわよ。レアリティを操作した物を一番最初に見るのは能力者なんだからさ」


 たしかにな。

 ゴミクズのレアリティを上げてもゴミはゴミだ。

 俺の価値観が狂うことはない。


 こいつは女神と会った時に下げる力を選択したのか。

 

 俺と似た能力……。


 やれやれ。

 まさか、こんな人間がいたとはな。


「ふん! レアリティ操作は重ねがけができるのよ。あなたの魅力を何百回と下げてやるわ! レアリティダウン!!」

 

 そんなことをされたら誰にも振り向いてもらえない人間になってしまう。


「レアリティアップ!!」


「ダウン!!」


「アップ!!」


「ダウン!!」


 ええい、らちが開かない。


「だったら限界まで価値を上げてやる!」


 禁じ手。


「レアリティアップ星3個!」


 これでゾンビみたいに男に惚れられるぞ。


「私だって! レアリティダウン!! 星3個!!」


 突然、俺たちの体は強烈な光に包まれた。

 そして、ボォオオオン! っという破裂音がしたかと思うと、周囲に煙が立ち込めた。


 爆発したのか?


 気がつけば力は消えていた。


「あれぇええ!? 力が出ないわ!! レアリティが下げられない!!」


 やれやれ。

 お互いの力が衝突してショートした感じか。

 俺の力も無くなっているようだな。


 女は号泣した。


「ええええええん!! あんまりだわぁあああああ!! うぇええええええん!!」


「なんで下げる力なんかもらったんだよ? 上げる力の方が使い道は高いのにさ」


「だってぇえええ! 今まで、いいことがなかったんだもーーん。世の中の男が不幸になって、それを見て楽しみたかったのよぉおおおお!!」


 やれやれ。

 随分とひねくれた思考だな。


「まぁ、その見た目だ。男にはモテるだろう。きっと、男関係で嫌なことでもあったんだろうけどさ」


「はぁ? 私なんか全然、モテないよ。陰キャで引きこもりだし」


「そうなのか? 可愛いと思うけど」


「は、はぁぁああ? お、お、お世辞はやめてよね」


 お世辞ではないが……。


「私は、今までいいことがなかったの。誰にも振り向いてもらえずに寂しい人生だったわ」


「ははは。おまえも俺と同じだな。魅力の女神がドジをしたんだ」


「だから、私の不幸を他人にもわかってもらいたかったのよ。価値の低いことを体感させたかったのよ。どうせ効果は1日だけよ。だったら、少しの時間でも、私と同じように、誰にも振り向いてもらえない、魅力のない人生を体験させたかったのよぉおおお!」


 やれやれ。


「もっと楽しいこと考えようよ」


「いいもん。私は陰キャだし。アニオタだし」


「俺もアニメ好きだよ。一緒じゃん」


「そ、そうなの?」


「ああ。よくヒトカラ行ってさ。アニソンばっかり歌ってる。今期のオープニングは全部歌えるかな」


「わ、私も……」


「なんだ。アニソン好きか。じゃあ、一緒にこれからどう? カラオケ」


「ええええええ!?」


「ははは。まぁ、仲良くやろうよ。力は消滅したけどさ。魅力の女神のことを知っているのは俺たちだけだろうしさ」


「う、うん」


 能力を使う生活には飽きてきてたんだよな。

 本当に仲良くなれる女友達が欲しかったんだ。


 俺たちは、互いに自己紹介をしてカラオケに行った。

 途中、今期のアニメの話で盛り上がったのはいうまでもない。


 そして、彼女はカラオケがプロ級に上手かった。

 萌え声でプロのアニメ声優みたいだ。


 1ヶ月後。

 俺は彼女と付き合うことになった。

 互いに初めての交際だ。

 まぁ、俺は色々とあったが、初めて本当の彼女ができた。

 

 今度、彼女を歌手デビューさせようと思う。

 小さな個人事務所を作ってさ、機材を購入して……。

 1億円くらいあったら簡単にできるだろう。

 なにせ、貯金は100億以上もあるからな。


 俺はレアリティアップの能力を使って、地道に貯金をしていたんだよな。

 力を失う危険性を考えて準備していたんだ。


 普通の人間に戻っても困らないだけの貯金。


 力はなくなっちゃったけどさ。

 これだけの貯金があれば遊んで暮らせるだろう。

 彼女と2人で悠々自適な生活も悪くない。


 これからはお互いの価値を努力して高めていこうと思う。

 人生は最高に楽しいな。



おしまい。



──

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俺、レアリティを操作します〜石でもゴミでも高値で売れる〜 神伊 咲児 @hukudahappy

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