第3話 星3個の効果
俺の体に付与してみた。
レアリティアップの効果。
まずは星1個。
するとどうだろうか。
俺を見かけた人間は、サインや握手を求めてきた。
どうやら著名人と勘違いをしているらしい。
美人な女の前で星2個にすると、告白されてしまった。
非モテの俺がだ。
まぁ、向こうから「私と付き合ってください」といってきたのだから仕方ない。
女の願望を叶えるのは男の役目だろう。
そういうわけで、しっかりと童貞は卒業させてもらった。
とびきりの美人とね。
この効果は1人にしか効かないから、取り囲まれたりすることはない。
けれど、いくつも付与することができて重複も可能だった。
つまり、星2個のレアリティアップを複数回に分けて俺の体に付与することができるのだ。
そうなると止まらない。
俺は美女をはべらかして街を歩いた。
令和のハーレム。
通りゆく男たちは、羨ましそうに見つめる。
「なんだあいつ……。美人ばっか連れて……」
「すげぇ……。実業家か?」
「裏山ぁああ」
「モテモテじゃん……」
ふふふ。
まぁ、悪い気はせんわな。
しかし、翌日。
ベッドの中で目を覚ますと、横にいる美女は苦笑した。
「わ、私……。なんでこんな格好??」
あんたが体を求めてきたから答えただけだってば。
彼女は俺を見て汗を飛散させる。
「じゃ、じゃあ……。私は用事があるから……」
そういって去って行った。
魔法が切れる瞬間である。
俺の力は1日までしか保たない。
もう1度付与してもさ。同じ相手には効果がないらしい。どうやら、1日だけ休ませる必要があるようだ。つまり、1人の人間を永遠に騙し続けることはできないのだ。
この瞬間は本当に虚しいんだ。
所詮は能力で好きになってんだなって……。
まぁ、それでも十分に楽しめるけどね。
さて、そろそろ最後の実験と行こうかな。
果たして星3個のレアリティアップを俺の体に付与したらどうなるんだろうか?
おそらく求婚を迫られることになるだろうな。
婚姻届を持ってきてさ。
効果は1日で切れるから絶対に書いたりせんけどね。
どうせ求婚されるなら美少女がいいよな。
俺は渋谷を歩く美少女に星3個の体を見せた。
すると、その美少女の目は血走り、体は真っ赤になっていた。
「好きぃいい……。好きぃいいい……。むふぅうう……」
ふふふ。
星3個の効果はてきめんだな。
凄まじい鼻息。
まるで突進前の闘牛って感じだ。
美少女は俺に抱きついた。
「おほぉ。強引だなぁ〜〜」
しかし、今までと明らかに様子が違う。
彼女は口から涎をダラダラと垂らして、まるでゾンビのような形相だった。
「好きぃいいいいい〜〜!!」
な、なんかヤバくないか?
「食べちゃいたいくらい」
え?
と目を見開いた時には遅かった。
女の口は俺の腕にかぶり付く。
「痛たたたたたたぁあああああああ!」
「ふきぃいいい!! ふきなのぉおお!! ふきぃいいいいいい!!」
いやいやいや。
俺は彼女を振り解いた。
「悪いけど。俺は好きじゃないんだ」
すると、彼女はカッターナイフを取り出した。
「死んで……。私の中で永遠になって……。あなたの死体は私が食べてあげるからぁあああああ!!」
うぉおおおおおおおおお!
完全にホラーじゃないかぁああああ!!
「好きぃいいいい!! 愛、愛、愛してるぅうううう!!」
俺は必死に逃げた。
この時ばかりは効果が1日で切れることに安堵する。
以前は効果の時間が短いと思っていたが、今回は一生分くらい長い時間だったな。
なんとか逃げて助かった。
やれやれ。もうこんなことは懲り懲りだ。
これで能力の検証は終わった。
あとは、適当にゴミクズを売って、自分好みの美女に1日だけ恋人になってもらって、そんな悠々自適な暮らしをしてればいいだろう。
そんな、ある日のこと。
俺がいつものように美女を横に連れていると、目の前に女が立った。
黒髪で地味な服。可愛い顔だが、なんというか、暗い感じ……。
女はニヤリと笑うとこういった。
「レアリティダウン。星1個」
え?
聞き間違いか?
すると、俺の虜になっていた美女は、俺の顔を見るなり「はぁ? なんで私と歩いてんの?」と冷たい言葉を発して去って行った。
マジか?
「きゃははは! 心配しないでよ。女って気分屋だからさ。明日には元に戻っているわよ」
こ、この力は……?
あの時……。魅力の女神はいっていた。
『レアリティを下げる力と上げる力。このどちらか1つをお選びください』
俺は上げる力を選択した。
「きゃははは! 最高! 男なんてみんな不幸になればいいのよ!!」
こいつはもしかして?
「今日は彼女にメールとかしないほうがいいわよ。どうせ取り合ってもらえないだろうしね。連絡は明日以降の方がいいわ。じゃあね」
「レアリティアップ。星2」
「え?」
俺は黒髪の女の価値を上げた。
すると通行人のサラリーマンが彼女の前で土下座する。
「どうか僕と付き合ってください!!」
「え? えええええ!?」
彼女はサラリーマンと俺のことを交互に見ていた。そして、自分の体に向かって、
「レアリティダウン!」
すると、サラリーマンは興味を失くしたようにどこかへ消えた。
この女……。
自分のレアリティを下げた。
もしかして、魅力の女神に会った時に、レアリティを下げる力をもらったってことか?
──
次回ラストです!
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