第7話 信じる

「庭……?」


 信志の目に入ったのは、芝生も植栽もボサボサの、かつて洋風庭園だったであろう庭だった。


「私の屋敷の庭よ」


 ハッと振り返ると、悪魔が洋館の入り口で腕を組んで立っていた。


「お前は今日からここの庭師ね。これをなんとかしなさい」

「ハァ!?」

「口を慎みなさい。私のことは『マスター』と呼ぶように」


 信志が文句を言おうと口を開きかけたとき、洋館のドアが開いた。そこから顔を出したのはいわゆる人型大根で……。


「ドラコちゃん!!」


 7歳児くらいの背丈に成長していたが、信志にはすぐドラコちゃんだと分かった。


「ただの大根になっちゃったわ」

「その割に服は着せてる」


 ドラコちゃんは、いかにも洋館のおぼっちゃんなフリルブラウスに膝丈のパンツを穿かされている。

 悪魔はフンと鼻を鳴らした。


「寂しがるのよ。コイツの世話も頼むわ」


 そして悪魔は室内へ入ってしまった。信志は玄関前の階段に腰を下ろしてドラコちゃんを抱きしめた。


「シ……ン、ジ? ナマエ?」

「ドラコちゃん! しゃべれるの!?」

「ウン。シ・ン・ジ?」

「そう。し・ん・じ」


 ドラコちゃんに表情はないが、嬉しそうな雰囲気は伝わってくる。


 人から信頼される男になる前に死んじゃったなあ。今はまだ死んだ実感が湧かない。両親には悪いことをした。

 でも、男の子に命を譲るのは正しい。それはこの先、何十年、何百年、あの悪魔にこき使われようと信じ抜ける。


 あの選択を、ずっと信じていよう。


「シンジ!」

「うん。俺は信志だよ」

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マンドラゴラ育成日記〜俺が改心すればほんとにただの大根に育つんですよね!?〜 街田あんぐる @angle_mc9

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