第11話 昔の友達

「で、ゆう兄。香菜ちゃんとはどういう関係なの?」

「水凪から説明を受けてなかったのか?」


 今日は家庭教師の日。

 遊園地に行った日から、美波は心を開いてくれたのか、優斗と自然に会話をしている。

 それを証拠付けるように、今二人が勉強している場所は、美波の部屋だ。


「兄弟だって聞いたけど、絶対に違いますよね」

「なんで、そう思うんだ」

「だって、二人とも全然似てないじゃないですか。香菜ちゃんは可愛いのに、ゆう兄は…………」


(本当にこの子、心を開くとグイグイ来るな…………。ややこしいことになるから、香菜との関係は秘密にしようと思っていたけど美波ちゃんには本当のことを話しておくか)


「実は――――と言うことなんだ」


 優斗は、水凪や流矢にしたように事細かく香菜との関係を説明していく。


「……その話を信じたとすると、香菜ちゃんはお化けってことになりませんか!?」

「いや、そこが不思議なんだよ。どうして昔の姿なのか。どうやって生きて来たのか、本当に分からないことだらけだよ、それを知るためにも、いち早く香菜の記憶を取り戻さないといけないんだ……」

「香菜ちゃんは、どんなことを忘れているの?」

「家族のことや、自分自身。それ以外にも色々なことを忘れている」

「覚えていることと、忘れていることの違いは何なんだろうね」

「……待ったく検討がつかないな……ってもうこんな時間じゃん、勉強再開するよ」

「は~い」


 優斗は時刻を確認すると慌てて家庭教師の仕事を再開した――


「はぁ~疲れたー」

「お疲れ様! 実は、今日お菓子買ってきてるから後で皆で食べようか」


 優斗は喜ぶ美波と一緒に階段を下りて、水凪えお香菜のいるリビングへと向かう。


「あ! 二人ともお疲れ様~」

「ゆうと、みてみて! かみひこうきつくってたんだ!」

「お! いいな、後でどっちが飛ぶかバトルしようか!」 

「うん!」


 そう会話をしていると、優斗は後ろから背中を軽く押される。


「ゆう兄、お菓子は」

「ちょっと待ってね……」


優斗はそう言い、持って来ていたカバンを取りに行き、その中から大量のお菓子を取り出した。ラムネにアメにチョコレート、スナック菓子などの様々なお菓子だ。


「うわ~おかしだ!」

「じゅるりっ」


 香菜と美波はお菓子に夢中になっている。


「どうしたのこんなに大量のお菓子」

「いつも、お世話になっているお礼にね」

「いや、悪いよ……家庭教師までしてもらっているのに」

「いいよ、家庭教師は俺がしたくてしているだけだし」

「ありがとう……それじゃ遠慮なく!」


 水凪は、誰よりも早くお菓子に手を伸ばして食べ始めた。

 隣で楽しみにしていた二人は慌ててお菓子に手を付ける。


「みなぎちゃんずるーい」

「なぎ姉大人気ない!!」


 優斗が香菜のことで考え事をしていると、むしゃむしゃとお菓子を食べている水凪が優斗の方を見た。


「優斗は食べなくていいの? もう無くなっちゃうよ」


 見れば、既にお菓子は初めにあった量の四分の一程度になっている。


(これ、一週間は持つぐらいの量だったんだけどな…………)


 優斗がそんなことを考えている間にあっというまに、すべてのお菓子が平らげられる。

 満足げにしている三人を横目に、これからは少しずつ買ってこようと決意する優斗だった。


 家に帰った優斗は香菜と話し合いを始める。


「なあ香菜、真衣ちゃんのこと覚えてる?」


 真衣ちゃんとは香菜が小学生の頃一番仲良くしていた友達のことである。


「うん、おぼえてるよ!」

「本当か?」


(ここにきて、初めての手掛かりだ)


「他の友達のことも覚えてる?」

「うん!」


(どういうことだ、俺の事や家族のことは覚えていなくて、学校の友達のことは 覚えている? その違いは何なんだろうか…………)


 うーん。と優斗が悩んでいると、香菜がお腹がすいたと言い出したので夜ご飯を作ることに。



 食事を終えて、香菜がお風呂に入っている間に、優斗は母へと電話を掛けた。


「もしもし、母さん」

「どうしたの? 香菜ちゃんのことで何かあった?」

「うん、実は香菜の記憶のことに関してなんだけど……どうやら学校の友達の事は覚えているらしいんだ」

「本当? その違いは何なんだろうね」

「そのことを確かめるためにも、香菜を友達に実際に合わせに行きたいんだけど……俺はあんまり関りが無かった子だから接点がなくて――」

「間を取り持って欲しいと……」

「その通りです…………」

「分かったわ、香菜ちゃんのタメだし聞いてみるわ」

「ありがとう母さん」


 ――それから数時間後、母から早速連絡があった。

 『真衣ちゃんの両親に事情を説明したら、真衣も楽しみにしているから是非遊びに来て欲しいって』と言うメッセージと共に地図が送られてくる。


(これで、少しでも香菜の記憶の事について分かれば…………)

 

 そう考えながら、寝ている香菜の頭を起こさないようにそっと撫で、優斗も眠りにつく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺は幼女で出来ている。 たこくらげ @zero0001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ