前半部分と後半部分の響き合いによって醸し出される切なさが魅力的な一首

「​​リーフパイぼろぼろ 天国行こうって約束をして練馬に行った」

「天国」と呼ばれる場所は、死後向かう場所、何の苦しみもない場所、いまの「ここ」とは異なる場所、というイメージがあります。そんな「天国」へ向かう約束をしたあと、実際に向かったのは練馬だった……。練馬が天国に等しい場所なのか、それとも天国へ行くのは遠い未来の約束で、いまは練馬に向かうことしかできないのか、それはわからないけれど、天国へ行きたい、という感情と、実際に練馬という場所に向かうしかない、という事実はどこかほの暗く、切ない感じがします。この歌のポイントは「リーフパイぼろぼろ」にあると感じていて、この「ぼろぼろ」に現在の自分たちを重ねているような印象を受けます。「ぼろぼろ」は、ぼろ雑巾、などの「ぼろ」を彷彿とさせるとともに、実際に世界から「ぼろぼろ」こぼれていくような感覚を与えてくれ、それは「天国行こう」以下の部分ともよく響き合っているように感じました。


(「短歌、わたしたちだけの踊り方」4選/文=初谷むい)