第28話「第二の魔王の正体」

「こちらに、どうぞ……」


 私は、エルフの騎士団が普段作戦会議をしているという部屋へと通された。

 ここで魔王や配下の魔物の情報を教えてくれるらしい。


 それにしても――。


「本当に、千年前の人……?」

「見たでしょ、あの異次元の強さ……。そうじゃないと、説明つかないよ……」

「私たち凄く喧嘩売るようなことしてたけど……用済みになったら、消されるんじゃ……?」


 エルフたちは私が怖いようで、遠巻きにこちらを見てヒソヒソと話をしていた。

 気持ちがわからないわけではないのだけど、これから一緒に戦おうとしているのにこれでは困る。


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ? 取って食べたりなんてしないから」


 王族の前ではないので、もう私は敬語を使うのをやめ、明るくて親しみやすい感じを意識して両手を広げた。

 すると――。


「「「「「ひぃいいいいい!」」」」」


 みんな、勢いよく部屋の隅へと固まってしまった。


 泣きそう……。


「お姉ちゃんが怖いってより、お姉ちゃんの力が怖いって感じでしょうから……」


 部屋の隅でブルブルと震えているエルフのほうを見ながら、アリシアちゃんが困ったように笑って言ってくる。


「ごめん、それフォローになってないよ……」


 どっちみち、私が怖がられていることに変わりないんだから。


「あはは……」


 ツッコミを入れると、アリシアちゃんはかわいらしく笑って誤魔化した。


 わかってて言ったな、この子……。


「これじゃあ、仲良くしようにも難しすぎるね……」


 他種族とは仲良くするに越したことはないんだけど、向こうがこちらを怖がったり嫌ったりしているのなら、それも難しい。

 魔王を討伐して、心を開いてもらうしかないのかな……?


「とりあえず、魔王の情報を教えてもらえるかな? 私たちも、魔王討伐に協力をするから」


 無害だと伝わるようにニコニコと笑みを浮かべながら、離れたところから声をかけてみる。

 近寄ったりしたら逃げられそうなので、今はこうするしかない。


「ま、魔王を、倒せるのですか……?」


 少しは心を開いてもらえたのか、一人が代表して怯えながらも尋ねてきた。

 やはり、この国も魔王に困らされているんだろう。


「情報がないとはっきりとは言えないけど、これでも魔王の一体である、ゴブリンロードは倒したからね。不可能ではないと思う」


 今でもゴブリンロードを魔王だとは認めたくないのだけど、今の時代では魔王と呼ばれているのだから、ここでは利用させてもらった。

 少なくとも、他の魔王たちとそう大差はないはずだ。


「そういえば、王様もそう言ってた……」

「千年前の人なら、本当に倒してくれるかも……」


 私の話を聞いていた他の子たちは、隅でヒソヒソと話を始める。

 利用する価値がある、と思ってくれたのかもしれない。


 というか、王様が私に情報を提供するように言ったのだから、そもそも拒否権はないはずなのだけど……。


「魔王の情報は、こちらに……」


 ジッと見つめていると、代表をして話していた子が巻物を見せてくれた。


 それに書かれている絵と文字を見た私は――

「スライム、ロード……!?」

 ――初めて聞くモンスターの名前に、驚きを隠せなかった。


 えっ、スライムって、あのスライム……?

 知能も殺傷力もたいしてない、新米冒険者が任される最弱モンスターが、魔王になっているの……?

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死に場所を求めて魔王討伐隊に志願したら、英雄になりました~千年前にAランク冒険者だった私、現代ではSSランク勇者より強いそうです~ ネコクロ【書籍6シリーズ発売中!!】 @Nekokuro2424

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