後書き

長らくカクヨムでは寝かせてあった、恋慕歌。


実はこの長歌は、笠間様(「白露」の主人公のご子孫)から「白露をイメージした曲の作詞をしませんか」とのオファーから始まったものです。


音楽経験は私もそこそこありますが、「作詞」は未経験。

というわけで、一度はお断りしたのです。ですが、笠間家で見つかった新たな資料を読み進めるうちに、私の心境もどんどん変化していきました。


というのも、市之進様の自宅が「池ノ入」にあったというのは、ご子孫の方のお話から判明していたのですが(別の資料でも裏付けを取っています)、「鬼と天狗」の資料として二本松図書館でコピーして貰っていた文久期の地図から、妙の実家が判明しました。(浦井家が、妙の実家です)

その結果、両家はごくごく近所であることは疑う余地がありません。


まさかの、「本当に幼馴染」だった可能性が浮上したんです。

やはり、これは市之進様夫婦のお導きだったと感じ、つらつらと黙考。

そこでふと「五・七調の歌詞であれば、四拍子の曲のリズムと合いそう」(音数の関係です)と閃いて、試しに「長歌ちょうか」を作ってみた次第です。


もっとも、「短歌」を作ったことはあっても、「長歌」となると、ほとんど作る人はいないのではないでしょうか。

明治期~大正時代にかけて活躍した旧二本松藩士、安部井あべい磐根いわねの頃ですら、「長歌」を作れる人はほとんどいなかったというのですから……。

※「安部井磐根」は、「鬼と天狗」でも安部井清介の名で登場しています。


新たな資料から、「市之進様と妙様は幼馴染だったらしい」ということがわかり、さらに市之進様は、江戸に出府していたこともあったようです。

それらの情報から、


前半(1番でも):結婚前に、江戸に旅立つ市之進を見送る


後半:夫婦となった二人が慶応4年7月27日を迎え、その後の思いについて


というテーマで、長歌にしてみました。


俳句・短歌ともに私の作品の多くは「文語調」なのですが、今回はやや長いことから、現代語訳をつけてみました。


ところどころ、「和歌」の技法も織り交ぜてありますので、気になる方は探してみてください(笑)。


生まれて初めて「長歌」を作ってみた次第ですが、これは俳句や短歌を作った経験があっても、難しい💦

磐根様などは、これよりも遥かに長い歌を詠まれていますから、本当に尊敬の念しかありません。


それにしても、切ないながらも気丈であり「似たもの同士」であったろう笠間夫妻。新たな史実の登場により、ますます憧れが募るばかりです。


カクヨムでは昨年の秋に連載していた「白露」。

現在、アルファポリスの歴史時代小説大賞にエントリー中ですが、一介の二本松藩士の物語として、思いを馳せていただけたならば、幸いです。


白露

https://kakuyomu.jp/works/16817330664784502587

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

長歌(拙作~「白露」より) 篠川翠 @K_Maru027

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る