行き先は……

もっちゃん(元貴)

バス


私は谷川成麿たにがわなりま、しがない会社員だ。


「ふぅー、今日も残業終わったぁーー!!」


最近人材不足でよりいっそう残業が増えてヘトヘトだ。


「おつかれさん!俺ももうちょっとで終わるよ」


同僚の力也りきやが私に声をかけて来た。


「ちょっとで終わるんだったら少しなら待つよ」


「いや、お前結婚したばかりで奥さん待ってるから早く帰ってやれよ!」


「悪いなぁー、じゃお先に!」


「ああ、気おつけてなぁー」


力也と別れた成麿は愛する妻の茉莉まつりが待っている自宅に向かう。


会社のすぐ前にあるバス停から、止まっていたバスに乗り込んだ。


席に座ると、乗客が私しかいなかった。


おかしいな、まだ夜10時になったばかりだけど‥‥‥


「次は、りきや、りきやです、お降りの方は降車ボタンを押してください」


次のバス停の名前がアナウンスされた。


「ん? りきや?」


さっきまで一緒に仕事をしていた同僚の名前だったような、なんか記憶が曖昧になって来た。


「次は、まつり、まつりです」


「まつり、まつり‥‥‥」


どっかで聞いたことあるような‥‥‥


なんかさっきから頭が痛い!!


まつりなんか大切な人だったような気がするけど‥‥‥


「次は、たにがわ、たにがわ‥‥‥」


あれ? 頭の中がぐるぐるして来た。


気持ちが悪い。


「終点、終点、なりま、なりまです!」


聞いたことないバス停だけど、だんだん頭が回らなくなっていたため、何も考えずにこの終点のバス停で降りようとしていた。


運賃箱に運賃を払おうと財布を出したら


「お客様、お代は結構です!もう貰っているので」


バスの運転手がそう言ってきた。


「そうですか?」


私は不思議に思いながらも、バスを降りると、あたりは真っ白で何も見えない。


ここは、どこだ?


辺りを見回しても何もないようだ。


乗ってきたバスの行き先の表示を見てみると‥‥‥


「うわぁぁぁぁーーーー!!!」


そこには、こう表示されていたからだ。




  【地獄】









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行き先は…… もっちゃん(元貴) @moChaN315

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