60グラム

あるまん

きづかなければよかったのか?

 でも気付いて……気付いてしまったんだ。



 僕はこの事実を公表する事で、若しかして命を狙われるのかもしれない……相手は世界に名を轟かす大企業だ。こんな中年メタボで碌に護身術も知らない男など赤子の手を捻るより簡単に存在を抹消出来るだろう。

 そして僕の存在など最初から無かったかのように世界は廻り続け、その企業の商品は何も知らない民衆に飛ぶ様に売れ、まるで……下世話な表現だが紙おむつが尿を吸収するが如く彼らの金を搾取し、幹部の私腹を肥やし続けるのだろう……。


 勿論その会社の商品は、自分も使用している。

 何故なら生命活動に必需品であるにも関わらず、その会社ともう一社によるほぼ寡占状態だからだ。

 その為僕らは疑問と憤りを感じつつも、その会社の商品に頼るしかない……。

 そのK社……表記はCで始まるがローマ字読みでは頭文字はKだ。ちなみにもう一つの会社もKである。

 K……もしかしてかの有名な秘密結社、クー・クラックス・クランとも繋がりがあるかもしれない……この商品はアメリカ発祥と言われている……恐ろしい、線が繋がってしまった……やはり僕の命は、事実を発表した日には消えているのだろう。

 偶然と笑えばいい。だが僕はもう、この二社を信用する事が難しくなってしまった……。



 もし、僕の発言が誰か……このカクヨムという広い海原の誰かに届き、其処から星の雨を降らせ、皆の心に届き、共感してくれる人が増えたのなら……あの会社も心を改め、少しは商品の改善をしてくれるのかもしれない。

 僕のこの無価値に等しい命一つで、少しでもあの会社の被害が収まるのならば……。




 嗚呼、さっさと発表してしまいたい……だが僅かな文章ではすぐカクヨムという大海の波に潰され、あはれ僕の文章など10,000mの深さに沈む藻屑となるであろう……。

 今720文字、後せめて、せめて280文字が埋まれば……でも遅筆な僕ではそれを埋めるのすら難儀してしまう……。

 某作家は1時間で6,000文字という驚異的執筆速度だそうだ……嗚呼っ、今この時、この瞬間だけでも、僕の命を削ってでもその速さを手に入れたい……。

 そして解き放たれた小さな火が、いつか大きな炎となり、強固なる大企業の外壁を焦がす事が出来るのなら……。



 嗚呼っ、そろそろだ……やっと、やっと発表出来る……。

 搔い摘むと簡単な事なのだ。若しかして幾人もの先駆者が僕と同じ様に気付いてしまい、企業の暗殺者に消されてるのかもしれない……。



 それでも、もう、止まる事は出来ない……言ってしまえっ!



 ……


 Kルビー(K池屋)のポテトチップスは最初に数枚をラップに包み簡単に手の届かない所に置いておく。袋の中を食べきり、物足りなさを感じつつ読書等で時間を潰し、嗚呼やはり駄目だもう一袋行ってしまえ、というタイミングで最初の数枚を開放し食べると何故か満足する。


 ……



 嗚呼、言ってしまった……これでK社製品の売り上げは激減し、10数年前と比べ値段変わらない癖に半分程に迄量が減ってしまったのに何も反省していない傲慢体質を糾弾する事が出来るだろう。

 嗚呼っ、繰り返すが何卒、これを読んだ方は星の雨を降らし、少しでもこの告発文を広めて欲しい……。



 そしてカルbーゲフンゲフン! 狩るBeeという企業名に書かれる通り、セクシーな蜂の衣装を着た炉体型の暗殺者、スズメバチちゃん三姉妹が僕の下へ現れ、

 「おにいちゃんはいってはいけないことをいいましたのです、あんさつです♪」

 といって僕の顔面をトリプルおまピーサンドイッチして圧死させるに違いない……。



 僕は残り少なくなった寿命に怯えつつ、全裸で正座してその時を待っている……。

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60グラム あるまん @aruman00

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