「仕方ない」で終わらない

「仕方ないには田舎が詰まっている。」とても鮮やかな書き出しからはじまるひと夏の物語。
ひとり田舎の祖母の家に預けられたユウトの前に現れたカオリとのささやかな甘酸っぱい物語かと思いきやぞっとする終盤、めちゃくちゃホラーでいろんな意味で余韻が残りました。
読み返したとき、田舎の緻密な描写が生々しく不穏さを煽っています。どこまでもさびしくて、わがままで、それはたしかに子どもが感じる当然の感情だけど、最後は「仕方ない」で終わらせていいのかどうか、純粋さが際立つゆえにぞわりとしました。
ハロー警報、あねが降る、など子どもっぽい聞き間違いのようにも思えるし実際にそう言っているのかもしれない、想像力をかき立てる言葉の使い方が絶妙だと思いました。
そして読み終わったったあとにタイトルをみて「!!」、夏の標本、素晴らしいです……。