知らない場所に迷い込む

とてもおもしろかったです。上野駅からの帰り道、知っている道のはずなのに知らない店があらわれ、果てにまったく知らない場所へと迷い込む短い不穏ロードノベル。
街の不思議さをあらわす描写がとても丁寧で、上野や六本木、秋葉原など知っている地名が登場するものの読む側も自然と知らない場所へ連れ込んでくれる作品だと思いました。
作中の「身近にあって、よく見知ったものの名前を人は意外と知らないものだ。」という一文が好きです、ふと周りを見渡せば名称を何も知らないものに囲まれて私たちは生活している、それに気づくことはここではない場所に迷い込んでしまう合図なのかもしれない。

とても余韻の残る作品でした。

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