巧妙な設定と表現力の二刀流!

うわ、これおもろ。

って思う作品ってどんな作品だろうと自分の中で考えたときに、やっぱり一番は面白い設定の物語なんですよね。
でも、設定がいくら面白くても、文章に難アリだとそっ閉じしてしまいます。
本作は面白そうな物語を面白く書いているので、普段こういう設定の物語を読まない僕のような人間でも、「うわ、これおもろ」ってなります。

以下、思ったことをそのまま書き残してます。

導入部分の視点(子供(にしては一人称が大人っぽい?)?女性?学生?)が各話毎に変わっていて、一体誰の視点なのかわからなくて、読み進めるとそういうことか、と納得できたのですが、ここは注意したほうが良いのかもしれないと思いました。
ただ、個人的には各物語の導入は整理されていて違和感なくキレイに入り込めたような気がします。一度入り込むとどんどん読み進めてしまいたくなりますね。話が進むにつれて描写と主人公の心情がリンクしていくので、そう感じるのかもしれません。

また、戦闘描写がくどくないのにしっかり情報が入ってくるので頭の中でイメージしやすかったです。
ネタバレになりますが、言霊を使って追い込んでいくシーンは絶望感があってハラハラさせられました。

その他細かいポイントとしては以下のとおりです。

>透き通ったガラスに水色と赤の模様の入った綺麗な風鈴だが、エアコンを切って換気をしている時でしかその声を奏でられないことを考えると、少しばかり気の毒に思えてしまう。

ここ共感ポイント。
ここの表現や各話の冒頭の表現がすごく綺麗で好きなので、綺麗なだけでなくて物語とリンクしたり主人公の心情と上手くマッチするとさらに「おっ!」ってなるかもしれません。

>エアコンの効いた部屋から出ると、廊下は生暖かく、じっとりと肌に汗が蘇る。
汗が蘇るっていうのは良い表現ですね。少ない単語で今の汗(現在)とさっきまでかいていた汗(過去)を同時に情報提供していてそれだけでも良いのに、語感も好きです。
また、その後に出てくる、「肌が泡立って、汗が噴き出す」もオリジナリティがあって好きですね。

以上、レベルの高い作品を読ませていただき、非常に勉強になりました。
良い作品を読むと自分の創作心をくすぐられますね。
引き続き読ませていただきます。

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霊々、夜。

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