第17話 アマテラス
空から迫りくる天使の軍団にカラ狐が
「
青い炎を纏った激しい疾風が、天使たちを無情に切り刻む。
「
始祖ヴァンパイアのダガーの両の手の爪がぐんぐんと伸び、突き刺した相手の血液を一瞬で吸い尽くす。
それでも天使たちは、感情があるのかないのか、全く変わらないペースでこちらへと進んでくる。
「三尾解放──
「
水刃が飛び、空間が歪められ、次々と天使たちの命が刈り取られていく。
それでも、天使どもは絶えることなく次々と現れ、空を覆い尽くしていく。
「ぎゃッ! ぎゃはははッッ! オシマイだ、オシマイだぁッ! こうなったらミオテルス様は止まらんっ! あぁ、ミオテルス様ぁ! どうか我らの命と引き換えに、あの悪魔たちを必ず……ぐ、ぐぅぅぁぁぁ、うわぁぁぁぁぁあ!」
アクデモールの指揮官っぽい奴らがヤケクソ気味に叫びながら、ミオテルスの光に飲まれて消滅していく。
「味方をも殺すアクデモール王国。自分を信仰する信者を躊躇もせず消し去る大天使。クソ国民にはお似合いのクソ天使だぜ……ったくよ、吐き気がするぜ……」
無尽蔵とも思える量の天使を相手に、さすがに息が切れてきた様子のカラ狐とダガーを下がらせる。
「二人ともよくやった。あとはオレに任せておけ」
「ハァ……ハァ……申し訳ありません、主……」
「くっ……! 夜であれば残らず叩き潰してやれたのに……!」
ようやくオレがこの世界に来た理由がわかったような気がする。
オレがこの世界に来た理由、それは──。
「この腐った世界を、ぶっ潰すためだ!」
元の世界でもムカつくこと、胸糞悪いこと、不条理、色々あった。
でも、さすがにこの世界ほどじゃねぇ。
少なくとも、このアクデモール王国と大天使ミオテルスは本物のクソゴミ野郎どもだ。
そして、こいつらはここで滅ぼさないと、この先にある村が滅びる。
さらに、その先にあるのは、
ちょっと一緒にいただけの魔物たち。
最初は狂ってると思った
化け物の集団にしか見えなかったあいつら。
でも。
このまま、あのクソ天使に消滅させられるのだけは納得いかねぇ。
あいつらを守れるとしたら、それは誰だ?
決まってる。
オレだろ!
「うぉぉぉぉぉぉ! よっしゃいくぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
体の奥底から力が湧き出してくる。
異世界だ? 天使だ?
ハッ、上等じゃねぇか。
そんなもん、オレのこのMIXでぶっ飛ばしてやるよ。
エクスカリバーMIXでな!
日本のオタ芸をナメるなよ、クソ天使ども!
『サガッッ!
ムウッ!
キグナスッ!
マリンッ!
アイオリア!
シャカッッッ!
もう一度オレに光を見せてくれ!
目覚めよ、我がエクスカリバァァァァァァァァァ!』
バリバリバリバリバリバーン!
天に掲げたオレの右手に稲妻が落ち、一本の剣が姿を現す。
赤、翠、碧、神々しい光を放つ宝石の埋め込まれた一振りの両刃剣。
「主様……! その神々しいオーラは……!」
「あぁ、主様……! それは、もしや伝説の聖剣エクスカリバーでは……! 相手が天使であろうが存在ごと打ち消すことの出来るという幻の剣……! 主様、あなたは一体どれほどの……あぁんっ!」
さしもの大天使もピクリと眉をひそめる。
どうやら冷酷残虐な大天使様でもエクスカリバーは無視できないらしい。
だが、オレはこれだけで終わらせるつもりはない。
ゆっくりとエクスカリバーを引くと、斜めに突き出した。
それから引いて、回し、振り回す。
まるで、肩が抜けて飛んでいくのではないかというくらいに。
そう、これはオタ芸の。
「ム、ラ、マ、サ、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
加速度的に増していく両腕の回転。
すると、オレの左手の中に一振りの刀が現れた。
「そ、そのオーラは、まさか……妖刀マサムネっ!?」
右手には聖剣エクスカリバー。
左手には妖刀マサムネ。
『うぉぉぉぉぉぉぉお!
焦りの色を見せる大天使ミオテルスが、天使たちをオレへと急かす。
だが、オレの腕の回転から放たれる聖と魔の斬撃に、天使たちはまるで紙くずのように切り裂かれていく。
「うおおおおおおおおおおっ!」
ズババババババババ!
飛び斬撃が見る見る天使たちを切り刻んでいき──。
ほぼすべての天使たちが、あっという間に細切れになり、崩れ落ちていった。
「……っ!」
残るは大天使ミオテルス、ただ一人。
宙に浮かんだ巨大なクソ天使がオレへと向けて手のひらを掲げる。
ウィン──っ。
そこから一直線に、光の粒子がオレへと目掛けて飛んでくる。
「主様!」
「我が主ッ!」
心配する二人をよそにオレはオタ芸の回転速度を上げ、さらに技を繋げる。
『そろそろいこうぜ、イエローパンチョス!』
イエローパンチョスからの。
『響けっ! 轟けッ! サンダースネイクッッッ!』
サンダースネイクだ!
バキバキバキ──ッ!
オレから放たれたヘビ状の紫色の光線が、ミオテルスの光の粒子を飲み込み、押し返していく。
そして──。
ドガァ!
大天使の顔へと命中した。
「ぐ、ぐ、ぐぁ……!」
ミオテルスの黒い目隠しが外れ、邪悪そのものな血走った眼が晒される。
「なにが神だっ! まるで悪魔じゃねぇか、その顔!」
ボゴボゴと音を立て、ミオテルスの体が作り変えられていく。
そして現れたのは、どこからどう見ても。
「グアァァァァァア!」
邪悪な悪魔。
「なんだなんだ? 本当に悪魔なのか? それともこの世界の神ってやつは、みんな悪魔みてぇなツラしてんのか? わかんねぇけど、悪魔ならこれで滅ぼしてやるぜ」
オレの言葉が聞こえてるのか、聞こえてないのか。
完全に理性を失ったかのように、ミオテルスはオレに向かって真っ直ぐ飛んで──いや、
スゥ~。
オタ芸の中で最も静かに緩やかに入るアマテラス。
オレはその予備動作を終え、激しい回転運動に入った。
『ア マ テ ラァァァァァァァァ ス!』
ド、スゥゥゥゥゥゥゥン──。
手応え、あり。
オレの両手の中の二刀が消えるとともに。
ザバババッバババッシュッ!
ミオテルスの体が切り刻まれ、弾けて、消えた。
「よぅ、この世界のクソ神。どうやら、オレんとこの神の方が上だったみたいだな」
地平線を見渡す。
すでにアクデモール王国軍の姿は人っ子一人残らず消え去っている。
さぁ、凱旋だ。
推しの元へ。
それから、仲間の元へと。
────────────
【あとがき】
ここまで読んでいただいて誠にありがとうございました。
自分では面白いと思って書いていたのですが、予想以上に反応が厳しかった(反応が厳しかったというかPVが全くつかなかった)のでここで完結とさせていただきます。
読んでいただいていた方のハートやPVがとても励みになりました、ありがとうございました。
次はもっと多くの方に楽しんでいただけるような作品を書けるように頑張ります。
よろしければ作者フォローなどいただけると嬉しいです。
では、またどこか別の作品でお会いしましょう!
異世界の禁忌の魔法がすべてオタ芸用語でした。オレにしか使えないオタ芸魔法で闇の城主として魔法無双だぜ! と思いきや、あまりにもこの世界がクソすぎたので最強部下1000体で滅ぼすことにします めで汰 @westend
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