第2話
眩しい....
日が顔を照らす。
...俺は死んだんじゃなかったのか...
あぁ夢、か。あんな夢を見たのに変に落ち着いている。現時刻を確認しようといつも枕元に置いてある時計を探す。
「あれ?ない?」
手元にあるのは芝生を触っているような感触
....
違う感触に惑い、身を起こし辺りを見渡すと
そこは森、の様なところだった。
しかし、生えてる植物は見た事のないものばかりでまるで意志を持っているかのような動きをしている。
「ここは、どこ...だ...」
頭の回転が追いつかない。が、落ち着け
とりあえず、今の状況を整理しよう。
「俺、ランニング帰りに鉄骨が降ってきて死ぬ。...夢を見た。で、目が覚めるとよく分からん森の中。....どゆこと!?!?」
わざわざ口に出して整理したが整理の意味が無いような意味を成していない。次に一応身体も異常がないか確認する。
...健康的な俺!!!には変わり無かったが、いつの間にか腕輪が付けられていた。
なんだこれ...
「ぐぬぬぬ、なんだこれ...取ろうとしても一向に取れないっ!!!」
ピコン
この場に合わない電子音がする。
「?なんの音だ。え、うわぁぁぁ!!!!」
目の前にいきなり電子板のような物が表示された。なんだ、これ...
触っても通り抜けるだけで消えそうにない。しかも色々、書いてある。
名前 佐藤
年齢26歳
身長172cm
体重63kg
スキル 鉄降
加護 死は救済に非ず
何故か俺の個人情報と、スキル、加護と言ったゲーム用語みたいなものが書かれていた。
「鉄降?てつふる?てっこう..かな?、なんだこれ...加護、死は救済に非ず?怖すぎるだろ!!!」
加護と言えば神さま仏さまのスーパーパワーで守ってくれる的なやつじゃないの!!
名前が物騒すぎる!、
しかしこの状況、ニートになったばかりで何をしたらいいか分からずとりあえず人気アニメを見ていたときに異世界転生と言ったものの展開によく似ている。
大体がチートやらなんやら主人公が会得して楽しい異世界生活を送ると言ったものだったが、チートっぽいスキルや加護は見当たらない。
「俺、色々どうなってんのよ....」
等々ストレスで頭がおかしくなり、幻覚を見始めてるのかもしれない。
だが、こんなところに突っ立って考えても何も状況は変わらない。
「とりあえず前に進むか」
森においてどっちが前か後ろかなんて分からないが、とりあえず進む。変な植物が不可思議な動きをしているが、気にしてはいけない。こんな森の中に人が住んでるとは思わないが、こんなよく分からない所で1人は絶対嫌だ。
一縷の希望を持ち前に進む。
進む
しかし景色は一向に変わらず、日が沈んでいくだけだった。
「どうしよう.....」
辺りもすっかり暗く、目に映るものは月明かりが照らす所だけだった。見知らぬ土地。変わらない景色。自分が無残に死ぬ夢。
限界だった。
ガサッ!
「!!!!?!」
声が聞こえた方を振り返っても何もいない。
「気のせいか...、大分疲れてるな...」
アー、アー
先程物音が聞こえた方から人の声のようなものが聞こえた。
「だれか、誰かいるのか!!!!」
こちらが尋ねても返事は返ってこない。
アー、アー
変わらない景色で唯一聞こえた声。
こんな所で聞こえる声がどんなに価値があるか。声が聞こえる場所に向かう。
しかし、真っ暗で何も見えない。
声はすぐ側のはずだ。
「だ、だれかい...」
バクン!
....
.........。
暗い。なんだこれ、身動き取れないし、
何か全体がヌルヌルする。
「だれかぁ!!誰かいますか!!!」
いくら叫んでも返って来るのは静寂だった。
「なんだよ、これ....穴にでもハマったのか?」
ツイてない。だが、身動ぎしても少しも動けない。
「痛ッッツツツツツ!!!!」
急に激痛が走る。
自然と身体に纏う粘液も多くなっている気がする。
やばい、これはやばいんじゃないか...
漠然と死を悟る。
なにかここから出る方法!!激痛が思考の邪魔をする。痛い!!!身動き取れないし、
何か、何かあるか!!!この状況で何が、ある?
......!!!スキル?そういえばスキルがあったはずだ。
....ど、どうやって使うんだ..
「痛い!!」
激痛が思考を許さない。
「スキル!スキル、!!!鉄降!!!」
適当に叫んでも何も起こらない。
やばいやばいやばいやばいやばい
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
「使用!!スキル使用鉄降!!」
ふと意識が溶けていく。仄かに聞こえるのは上から何かが落ちていくような音だった。
十字の形を模した大きな鉄骨が風を切り、降る。
ドゴォオオオオオオン!!!
と大きな音と砂埃を立て、食人花と半壊した何かを潰した。
異世界転生しました。心中相手探しています。 はなまる満点テンテン丸 @kakikueba123
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