これでまた、僕は君に

ヤダカ ユウ

一等星

──これでまた、僕は君に会えるのかな


学校の屋上から。


──そしたらもう一度。あの笑顔が見れるかな


僕は飛び降りた。



あれから一年が経った。


僕の隣に彼女の姿はない。


あの時、道路に飛び出した一匹の猫を助けた君は。もう二度と、その目に光を宿すことはなかった。



学校に居づらくなった僕は、この街に引っ越してきた。


僕のことを知っている人はいるはずもなく、毎日のように同じ時間が流れていく。


ただ平凡な毎日。いつもと変わらない日常。


僕はその当たり前が嬉しかったのかもしれない。



帰り道。一匹の猫が視界を掠める。


「お前もしかして……あの時のっ!」


「おい、ちょっと待てよ!」


僕はその猫の背を追った。



いつの間にか整備された階段。


いつの日か来た山の上の公園。


あの日二人で座ったベンチには、あの猫が丸まっている。


僕はその隣にそっと腰かけた。


ぼーっと眺める先には、雲がゆっくりと流れている。


次第に自分の瞼が落ちていくのがわかる。


そして意識が途切れた。



──大丈夫だよ。私はここにいるから



気が付くと辺りは暗闇に包まれていた。


隣からは気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。


「まだいたのか。お前は呑気でいいよな」


丸いガラスに星が映る。


そこから一筋の雫が零れた。


「君にも見せてあげたかったな……」



──その日、僕の瞳で輝いた星は永遠に消えることのなかった


ベンチには三つの影が寄り添っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これでまた、僕は君に ヤダカ ユウ @Yadaka_Yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ