ネリネ

「私の腕はどこだ?」

「アン様の腕は・・・あちらにありますわ・・・」


アンは立ち上がり腕と槍を拾う。皆アンに注目している。槍が消滅し腕を胸の前に当てると体に吸い込まれるように消えて行った。少しアンの胸が大きくなった気がした。


「さて、インフどうする?」

「そうだな・・しかし、道具屋のオヤジ、ステータスとスキル知らなかったな」

「そうなの?」

「ああ、皆ステータスは見れるな?」


皆が頷く。


「もしかして、私達だけってことですの?」

「そんな事ねえだろ?」

「どうなの?街に行って人に聞いてみては?」

「インフ、人はどうでもいいであろう」

「う~ん、気になるんだよな。お、そうだ。今、この状態をセーブする」

「ふむ・・で?」

「③をロードすると道具屋が破壊される前の状態にロードされるから道具屋のオヤジに聞いて来る」

「分かった」


②にセーブをして③をロードする


「聞いてきた」

「え?イン様もう?」

「ニット分かる?この不気味さが」

「ああ、瞬時にって事だろ?」

「うん」

「ま、いいじゃねえか。そういうもんだ。でよ、やっぱオヤジ知らねえわ。ついでに街の人にも声を掛けたが知ってるやついないな」

「俺達5人だけって事かよ」

「そうなるな」

「インフそれを知ったからなんだ?」

「これは仮定だが、ループして記憶があるのは俺達だけぽいな。つまり、ステータスを見れる者だけ記憶があるんじゃないか?」

「どういう事なの?」

「ステータスが見れる者が4人集まりそして魔王を倒すと、ループする条件になっている気がする。今アンを殺していれば・・おそらく」

「インフ、ならば今私を殺し確かめるとよい」

「もういい、それに同じことが起きるのは分かっている」

「ねぇ・・ニット道具屋の不具合ってあれだけなのかなあ?」

「エターナル様の言う通りですわ。何かありそうな気がします」

「私もエターナの意見に賛成するとしよう。インフどうする?」

「そうだな・・とりあえず、道具屋前まで行くか」


道具屋迄ターナのルートで移動する。道具屋前に来ると店に大きな穴が開き店が閉まっていた。俺達は中に無理やり入ろうとしたが、何かの条件が必要なのか、強力な見えない壁に阻まれ中に踏み入れる事を拒否されていた。


「小僧どうするんだ?」

「う~ん・・」

「ねね、ニット」

「なんだ?」

「道具屋の前のセーブをロードしてそこから再開してみたらいいんじゃないかな?」

「それだな。インフやり直すぞ」

「分かった」


②にセーブし③をロードする。


「アン、戦うのはやめだ」

「何故だ?」


皆に起きた事を説明する。


「なるほどな。しかし戦おう」


アンが戦いを強く望む。魔王としての使命に駆られているのかもしれない。リミーがアンの椅子を取ると、俺達は魔王城の前に行き。再度アンと戦い同じ様に左腕を切り落とし俺が勝利した。そして、道具屋の前まで戻って来ると②と③にセーブをする。


「ねね・・・ニット怖くないの?セーブをするの」

「なんでだ?」

「分からない?」

「どういう事だ?」

「アン分かるか?」

「いや?どういう事だ?」

「えとね、1~3までセーブ欄あるんだよね?」

「ああ、そうだ」

「例えばね、②にセーブをした瞬間に、その世界は消滅してるって事だよね?つまりさあ、ニットは②が道具屋が破壊されて中に入れないから③をロードして再開したんだよね?そして、アンが椅子で破壊しない様にして、アンと戦って今この道具屋の前に戻ってきたじゃない?そして②にセーブしたんだよね?じゃあさ、②の道具屋が破壊された世界は消滅したってことよね?道具屋が破壊された世界に住む人も私達も、言ってる事おかしいかな?」


俺は目の前の女を眺めていた。ぐぬぬぬぬ・・こいつ、いつの間にこんな知恵を・・賢者だからか?しかし、ターナの話が突き刺さる。俺はいったい今までどのくらいの人を消滅させたのだろうか?この最高の仲間と共に・・


「エターナのいう通りだな」

「ああ・・思いもしてなかった」

「エターナル様、どうすれば?」

「私の考えなんだけどね」


先程の話が無ければ、ターナの話に耳を真剣に傾ける事はなかっただろう。


「この世界はね。ニットのスキル、セーブが関係していると思うの。そのセーブを消滅させれば・・もしかしたら、ループが終わるんじゃないかな?って、だってね、私達はニットと会うとループしていたんだよ?ニットと会わなければ、ループしないんだよ?じゃあ、私達に無くてニットに有る物ってスキルのセーブじゃない?だから・・ニットがループの原因じゃなくてそのスキルが原因なんじゃないかな?」

「セーブ欄の破壊か・・不具合か?」

「小僧どういう事だ?」

「つまりさ、不具合の状態をセーブしたらどうだ?」

「ふむ、インフやる価値はあるな」

「うん。そうだね。ニットやってみようよ」

「そうですわ。何もしないよりもやってみるべきですわ」

「小僧そういう事だ満場一致だな」

「ああ、分かった」


俺達は道具屋に入る。オヤジが心なしか睨んでいる気がしてくるぜ。

ここで③にセーブをした。

そして、カバンの一番上の欄を空白にして買い物をし、魔水晶の不具合を起こし、店の外に出る。


「やっぱ、もう一度見ても変な事になってやがるぜ」

「ニットセーブできる?」

「待ってな」


スキルを開くと黒くなっていて、セーブが出来そうにない・・


「出来そうにないな・・」

「エターナル様何かありませんこと?」

「う~~ん」


心に引っ掛かるものが・・しかし、思い出せない。喉元にまででてきているんだが・・人の名前を思い出そうとしているあの感覚、ええいもどかしい!


「大賢者様の私でも分からない事あるよ~」


ちっ、自分で大賢者と言い出しやがった。ん?賢者?・・・・・・・・・・・・それだ!


「ターナ、この不具合の世界でエンド神殿にルート使えるか?」

「どうだろー?やってみるね。指定、インフィニット・アンリミテッド、アン・エンド、バウンド・レス、リミット・レス、ルート:エンド神殿」


次の瞬間、一コマ一コマドット絵で敷き詰められた世界の中で一人の人物が立っている。


「勇者様よくぞ参られました」


俺達はもうすでに貰っているからな・・どうするか・・アンはどうだ?魔王に神の祝福はどうなんだ?


「アン、神の祝福を受けろ」

「ははは、魔王の私がか」

「ああ」

「いいだろう、何を考えているか知らんが」

「神官、俺の仲間の一人はまだ神の祝福を受けてない。受けさせてくれるか?」

「分かりました。その前にセーブをします。セーブ欄をお出しください」

「スキルオープン」


セーブ欄が出る。


「では、開いている欄を指定してください」

「1と2は出来るか?」

「分かりました。1,2の欄ですね?」

「ああ、頼む」

「この者に栄光あらんことを」


スキルノートが光ると1と2にセーブされる。


「よし」

「では、これをアン・エンド様に」


光のローブを差し出す。


「いらん」


皆が笑う


「さて・・とりあえずこの状態をセーブした・・でどうするんだ?」

「ニット、今私達はどのセーブなの?」

「3番だな」

「どれかロードしてみたら?」

「分かった」


①をロードすると、辺りが真っ暗になりスキルノートだけが宙に浮かび光っている。そのスキルノート①の欄にはこう書かれていた。


【お気の毒ですが、この記録は破壊されました。】


セーブが消滅した・・そして、今俺も・・意識はある。その意識の中で③の欄を強く思い描くと道具屋で皆が立っている。


「よく聞いてくれ、①の欄が破壊された」

「本当!やった~!」

「エターナル様すごいですわ」

「嬢ちゃんの言う事守ってれば上手い事行きそうだな」

「うむ。エターナ、良く思いついたな」

「でしょ~。私は天才過ぎて・・自分が怖いわ!」


俺は黙って②をロードした。先程と同じように破壊されていた。そして③をロードする。


「①と②が破壊された」

「本当!やった~!」

「エターナル様すごいですわ」

「嬢ちゃんの言う事守ってれば上手い事行きそうだな」

「うむ。エターナ、良く思いついたな」

「でしょ~。私は天才過ぎて・・自分が怖いわ!」


繰り返しているか・・・やはり・・ループはセーブスキルということか?

しかし・・なんだろうか・・この湧きあがる怒りは!俺は無言でターナの頭に拳骨をする。


「いたーーーーーーい!!なんで?なんでえええ!!」


皆で笑い合った。そして皆に説明するともう一度不具合を起こしてエンド神殿にいき、先程と同じようにアンが祝福を受け③に自動セーブする。


さて・・これで最後か、しかし・・


「なぁ・・③をロードするとだがな・全部消滅するぞ?この世界が・・」

「え?どういう事なの?」


俺は見てきた事をありのままに説明をした。皆が黙り込む。


「俺自身は、消滅してもいいが・・この世界は・・な」


その時


不意に光が差し女神が現れた。あまりにも突然の事だった。


「勇者よ、この世界を消去してはなりません」

「女神か、セーブ欄全部破壊すると世界が消滅するのか?」

「その通りです。」

「俺達はループを止めたい。どうしたら止まる?」

「その様に、この世界は作られました。止める事は不可能」

「不可能?」

「はい。そもそも、この世界は、勇者が18歳以下の時間軸が存在しない」

「は?」

「貴方の始まりは、全て18歳の部屋から始まる筈です」

「そうだ・・・俺は、いつもあそこから・・・いや、しかし、18歳以下の記憶はあるぞ」

「それは、全て作られた記憶です。貴方の記憶は、恐らく16歳の時に、私からスキルを授かるという記憶。それも、全て作られた記憶です」

「嘘をつくな!」

「真実です。16歳の前の記憶はない筈です」


俺は、脳の隅々までフル回転させて、記憶の欠片を頭の中より探そうとした。無い・・女神の言う通りに16歳以下の記憶が何一つ無い。頭がおかしくなりそうだ。


「女神様、私達は一体何者なのですか?」

「貴方達もそして私も全て作られた存在」

「女神あんたもか?」

「はい。私もです。私は、この世界を管理する使命を与えられています」

「俺は、この世界を消滅さす気はない。女神よ、どうすればいいのか教えてくれ」

「一つだけ方法はあります。それなりの代償は払う事になりますが」

「どんな?」

「永遠と消滅です。」

「どう言う事だ?」

「この世界を内包する器と、この世界の代わりに消滅する器です」

「言っている意味がわからない」

「この世界の時間軸を止め、この世界の器となる者が一人、この世界、いえ、セーブ欄を破壊すれば、確かにループは止まりますが、その時、ループ時の記憶を持つ者達、ステータスを持つ者が消滅する事となります。この世界は器となった者と違う世界に転送され、そこで消滅は守られる」

「器になった者はどうなる?」

「ほぼ永遠の時間を過ごす事になる」

「少し待ってくれ」

「はい、時間は十分にあります。」

「皆聞いたか?」

「はい。イン様どういう事ですの?」

「このセーブを破壊すると、この世界は消滅するが、一人がこの世界を守る器となり、他のステータスを持つ者、つまり俺達の事だな、一人以外は消滅する。器になった者は永遠に生きるらしい」

「インフ貴様はどうするつもりだ?」

「俺は、この世界を終わらせる。俺は消滅するのを選ぶ。このままループする世界でいるのか、終わらせるか、皆決めてくれ」

「ニット、私も終わらせたい。結構ね疲れてるのは本当なの、ループはもう懲り懲りだわ。私も消滅しても構わない」

「私もですわ」

「俺はリミットと一緒だ」

「フッ、ならば器とやらは、私が引き受けよう」

「アン、永遠だぞ?」

「女神よ」

「なんでしょう?魔王」

「この者達を、生まれ変わらす事は出来るのか?」

「いつになるか分かりませんが」

「その答えだけで十分だ」

「インフ、エターナ、リミット、バウンド!いいか?お前達生まれ変わり私の元に来い。待ってるぞ」


皆がアンと抱き合う。


「女神よ、私が器となろう」

「そうですか、やはりセーブ欄を破壊しますか」

「ああ、女神悪いな。俺達は、ループはもう懲り懲りだ」

「分かりました、魔王よ、少し我慢して下さい。いきますよ。」


アンに、ドット絵が吸収されていく。アンはとても苦しそうな顔で立っていたが我慢出来無くなったのか、うずくまり胸に手を当てている。


「くっ!」


全てが吸収されると、辺りは真っ暗になり暗闇の中スキルノートが光を放ち、皆の姿を照らしている。


「さて、これで終わりだ」


俺達は声は出さずに自然と抱き合っていた。


「アン、女神は?」

「私の中にいる」

「そうか、女神聞こえてたらお願いがある。俺達を同じ時代、アンと同じ世界に同じ時間に生まれ変わらせてくれ」

「分かったと言っている」

「アン待っててくれ。必ずお前は、俺達が助けてやる」

「アン、大賢者の私を待っててね」

「アン様、必ず行きます。その時はよろしくお願いします」

「アン、この手の印忘れんじねえぞ」

「私は、お前達を待っている。お前達は必ず来ると信じて、時を過ごそう」

「名残惜しいが、皆いいか?」

「うん」

「はい」

「おう」


俺はスキルノートを出すと右手の印が見える様に前に出すと、皆が手を出し拳を合わせた。


「最高の仲間だ」


真っ暗な空間にアンだけが立ち、四人の声が響く。


待っててくれ!俺達は、お前の世界を冒険し尽くすからな!!


そして、アンは光に包まれ何処かに転送された。

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【セーブ】【ロード】を駆使して魔王を倒した勇者の俺は、早く逃げ出したい 株式会社800 @doguu800

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