勇魔
「しかし、美しい城だな。破壊するのはもったいないな」
魔王の背景に魔王城が写り込んでいる。
「ふっ、私にとっては忌わしき城だが、破壊してもと思うと。美しく見えるもんだな。それよりもだ、装備は?」
「これでいい」
「そうか」
「行くぞ!」
「掛かってこい!勇者!」
この戦いは短時間で終わるだろうとの予感が俺はしていた。魔王も同じことを感じているだろう。
ブーストを2度掛けし素早さの向上、そして、2本のダガーを換装する。一気に魔王に向かって走り寄る。一発で仕留める!魔王迄10m手前で跳躍し、ウィンド・バーストを唱え暴風を自らの背中方向に発生させる。暴風の力で自らの速度を更に加速させ上空より一瞬で距離を詰め、2本のダガーを魔王に突きさそうと飛び掛かる。
「はあああ!!」
魔王は余裕なのか、身動きせず立ったままでいる。魔王の胸と首にダガーを突き刺した・・が、手に何の感触も無く、魔王の姿を見失った。
転移魔法か?
どこだ?
右手の森の中から木々が倒れてゆく音が響く。音の響く方向から長さ2m程のデスサイズが数十本、俺目掛け、まるで弾丸のような速さで飛んでくる。
「ウィンド・バースト!」
足元に暴風を上空方向に発生させ上空に逃げる。
「プロテクト!」
着地時の衝撃に対処しながら落下してゆく。魔王の姿を探す。
居た!
森の中を移動している姿が目に入った。ダガーを手から離すと一瞬でダガーが消滅する。
「イマジネーション・アロー!」
数百の光の矢が周りを取り囲む。輪ゴムを飛ばす様に構えると落下しながら、森の木々の隙間から魔王の姿を一瞬だけ確認した刹那右親指と人差し指を開くと数百の矢は一瞬で地上に降り注ぐ。木々が倒され土煙が上がる。
「ウィンド・バースト!」
下方向に暴風を発生させ着地し
「疾風!武器換装!妖刀ムラマサ!」
刀を肩に担ぎ、森と草原の境目に向かって獲物を狩るチーターの様に駆ける。矢を回避するため森より出てきた魔王に向かって一瞬で距離を詰める。肩に担いでいた態勢そのまま刀を振り下ろす
「うおおおおお!!」
が、宙より紫色の光を放つ槍を魔王は取り出し槍を両手で広げて持ち
「はっ!」
刀を防ぐと体を回しながら槍を振り回す。
「ふん!」
刀で防ぐと槍を引き怒涛の突きをしてくる。
「疾風!」
後ろに飛び退き、着地した瞬間身を屈め魔王に飛び掛かろうとするが魔王の口から
「魔弾!」
魔王の周りに真っ黒い球の様な物が数百個浮かぶと右手を開き俺の方に向けている。危険を察知すると1回だけ使用可能な魔法を使う。
「疾風迅雷!」
テレポートしたかと間違うくらいの速さで後ろに走ると魔王から射出された球が地上に穴を開け土煙を作り出す。そのまま上空に跳躍すると魔王も跳躍していた。目の前に魔王が現れた。その時すでに魔王は槍での攻撃動作を行っていた。
「くっ!!」
刀で防ごうとしたが、魔王の払いに対処できず、槍の柄で腹を殴られた瞬間地上に叩きつけられ、体を回転さしながら木の根元に当たり仰向けに転がる。
「くううう!痛てえええ!ちっ!」
上を見上げると魔王が槍を構え俺に向かって落下してきていた。
「換装魔法・連撃!」
周囲に24本の武器が浮かび、その一つを手にする。
「ブースト!ブースト!ブースト!」
魔王は落下しながら
「魔剣乱舞!」
魔王の周りに数十本の剣が浮かぶと、投げるような仕草をした瞬間、剣の雨が向かって来る。
「world of spirits・wind」
魔王が一気に加速し、剣と同じ速さで距離を詰めて来る。
「絶対零度!」
氷の壁で包み込まれると、魔王の剣を氷の壁が削り取られながら防ぐ。全ての剣を防ぎ切った所で氷の壁が破壊され消滅した瞬間魔王が着地する。その瞬間魔王は槍を払う。手に持つ武器で槍を防ぐと武器が消滅する。その瞬間に次の武器を握る。
「パワー・ゲイン!!」
「おおおおおおお!!!
「はああああああああ!!」
武器を振り下ろす。魔王は槍を払ってくる。武器と槍が交差する。そして槍が弾かれ魔王は体制を後方に崩す。武器は消滅し、また新しく武器を手にする。
「魔王!これで終わりだああああああ!!!!おおおおおおお!!!」
全身全霊で一撃を入れては次の武器を取り21度魔王に向かって叩き付ける。魔王は片足を付き顔の前に槍を防ぐように持ち槍で21度防ぐ。しかし、勇者に力負けをして手が痺れている。
「ちっ!」
{魔弾!!」
勇者の武器が手に持っているのが最後の一本と確認すると、この状況を乗り越えようと魔法を唱え。後方に飛び退くため後方に跳躍する。しかし、勇者も跳躍していた。それと同時に攻撃動作を行っていた。2人が着地した瞬間魔王の槍を持つ左腕が切り落とされた。槍と左腕が地に転がる。地が魔王の血で染まってゆく。
「ううううううう」
勇者は、魔王の首に剣を突き付ける。
「ふっ・・・参った。私の負けだ」
「ふう・・・魔王、これで俺達の戦いは終わりだ」
「ふふ。そうだな。名残惜しいが。やはり魔王は勇者に勝てぬか」
「それよりも治療を。おーい!ターナ!!」
ターナ達の周りを囲っていた魔法陣が消え3人が降りて来る。
「悪い。アンの腕を直してやってくれ」
「いや、ヒールだけでいい傷口を塞いでくれ」
「しかし」
「いい。インフ貴様に負けた思い出として、このままでいよう」
「分かったわ。ヒーリング」
アンの腕の切り口が塞ぎ血が止まる。
「しかし!お前等すげえ戦いだったな!上から見ててビビったぜ」
「凄かったですわ。イン様もアン様も」
「しかし・・疲れたあ~」
「私もだ」
俺は爺さんのように座り込み、仰向けに倒れる。アンも俺の横で転がる。そこには絶景が広がっていた。
「ムフフフフ」
「きゃあああああ!見ないでええ!!」
リミーが短いスカートの前と後ろを抑え中が見えない様に努力する。
「ちょっと!!見ないでよ!!」
あん?そいやあ・・ターナのパンツも見えてたのか・・気が付かなかった。
「ほお・・・小僧・・・・次は俺とやろうじゃないか・・殺してやる・・・」
「ま、待って、バウンドごめーーん!!今のは不可抗力だって!!」
疾風!!
俺は力の限り逃げた。遠くで皆が笑っている声が木霊している。アンの声も。
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