第6話 エピローグ
自宅に戻った私は真っ先にデビュー作を手に取って、あとがきまでページを捲る。
『私にファンタジーというジャンルを与えてくれたのは父親でした。なので、今も感謝しています』
これかぁ!
それは見開き2ページにわたる文章の、ほんの一部分。
言われてはじめて「そんなことも書いたっけ」と思い出すレベルだ。
そうして、新しい日常が始まった。
新しいこと、大変なこと、苦しいこと、たくさんあるし吐きそうな日もあるけど……今までにないくらい私の人生は充実してる!
*
「2巻たくさん平積みされてたよ〜」
「ほんと!?近所のイオンモール!?」
「そうそうー」
母からの電話で、私は幸せを噛みしめる。
「そういえばお父さんねー」
「うん?お父さん何か言ってた?」
「ネット投稿?の頃から応援してたんだってー。使ってた名前は確か……」
奴かよ!!
毎回熱心にコメントを残す割に、妙に上から目線の奴!
確かに奴には何度も助けられ支えられた。
アドバイスを取り入れて改稿に反映したのは一度や二度じゃない!
最古参と言ってもいいポジションの読者!
「お父さんずーーっとねぇ、『これはアイツの書く文だ、間違いない』なんて言ってて、そしたら本当に……びっくり!」
「なら、なんか言ってくれてもよかったのに」
「誰かさんが連絡、無視してたからねぇ」
それもそうだ!
しかも、途中から父の心も折れたのか遂に一通も連絡が来なくなっていた。
そんなことされると私の方からも送りにくくなる!
「でね、お父さん……公募のページで受賞作品見た日に泣いちゃってー」
「へ、へぇ」
目の前には化粧台、鏡に映る私の顔は分かりやすく口角が上がってる。
「それでね!本買ってきた日も涙目で、もう……こんな顔見たことない!ってくらい真剣に読んでたの!」
「そうなんだ!?」
「そこから最後にまた!あとがき読みながらぼろっぼろに泣きだしてー」
改めて鏡を見ると、私の顔は過去最大級に緩みきっていた。
「長々ごめんねぇ、まだ大丈夫-?」
「ん、全然へーき」
「あの夜に何話してたか分からないけどね、帰ってからそれはもう褒めてて褒めてて」
「お、おう……」
段々とこそばゆく、くすぐったい気持ちになってきた。
「これはハリウッドで実写化しても問題ない!とか言い出して!親バカなんだから」
「ごめん、やっぱりそろそろ……またね!」
恥ずかしさに耐えきれなくなり、私は一方的に電話を切る。
私は決めた。
お正月以外も、たまに実家に帰ることを。
そして説教してやる!
『直接言え、バカモノ』ってね。
私はファンタジーが好きだ!
だから、これからも私だけのファンタジーを書き続ける!
完
娘と父とハイファンタジー トモフジテツ🏴☠️ @tomofuzitetu
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