ホラーとは、どうあるべきなのか?
- ★★★ Excellent!!!
本当のホラーとは絶望であり、バッドエンドであるべきだ。
個人的にだが、ホラー好きの私は心の底からそう思っている。ただ、悲しいかな売れ線ではないw 最近、読んだホラー小説の結末がいちいち良い終わり方だったのでヤキモキしていたところだ。そんな時に、今作に出会った。
やや愚痴っぽくなってしまったが、今作は私のストレスを発散してくれた良作だったと思う。
この物語は、私の切望をしっかりと実現できている。
タグにつけらえている『シチュエーションスリラー』『不条理』なども実に適切。まったくそのとおりの作品だった。タグに偽りなし! 筆者の計算どおりの作品になっているのではないだろうか。
世界観にオリジナリティーがあって、序盤から色々と考察ができた。
その一つに、私が主人公なら、寝た振りをして食事を提供する人間を観察するというのがある。管理者の正体を突き止めて、世界の謎を探ろうとする手段だ。
考察の幅があるのは本当によくできた物語だと思う。
海の中にいる正体不明の巨大魚もいい。鯨は肉食ではないので、謎の巨大魚となっているのだが、そうなってくると、未来? それとも別の世界だろうか? 精神世界という設定も面白い。精神世界ならば巨大魚はメタファーか? 白鯨ならば自分との戦いという暗喩になるが、今作は人喰い魚。うーーん。なんだろう? 想像するのは楽しい。筆者は意味なんか作っていないのかもしれないが、読者としては色々と考えてしまうのだ。それほどまでに筆力があるのだろう。とにかく、考察の幅があるのは楽しい。
そしてなにより、特筆すべきは、やはり今作のラストシーンだろう。
人殺しの女と二人きりになる恐怖。アダムとイブ。林檎というのは始祖のメタファーであるが、なんとも不気味な世界の始まりだ。毒林檎なのかな? 主人公も毒されているのかもね。ふふふ。これぞホラー。お見事! やっぱりホラーはこうでなくちゃ! 極上の読後感ですよ。