SF小説とは、未知の世界を構築して、読み手に理解させ、ともに想像して、その時に脳みそからちょこっと分泌されるトロッとしたモノを楽しむものである。
物語の世界は登場人物たちにとっては理解の枠を越えるものであり、読み手にとっては自由に妄想できるダイヤル式のお楽しみ増幅メーターみたいなものであり。
「これはSF作品です」って狙ってしまうと世界を操作するダイヤルが作者の匙加減に委ねられてしまうが、秋待さんの描くSFって、もうね、ダイヤルはひねり切っているんです。もう限界までぱっつぱつにひねってある。その中を登場人物がどう動くのか、刮目せよ! って具合に。
主人公、おそらく大人気間違いなしのあいつ、そして息子さん。世界なんてどうでもいい。みんなが今までどうやって動いてきたかわかるくらいに人間が主役のSF小説です。
雨の中を走るシーンの爽快さ! ここへ持っていく文章の巧みさ! この作品と出会えてよかった! と思える一本。ぜひ!