人生挫折気味の壁サークル同人作家が異世界転移したら、カミ様として崇められてしまいました
月湖
異世界転生、しちゃいました?
第1話 楽しい楽しい同人生活
「はーい、新刊と限定コピー誌2部ずつですねー。ありがとうございますー!」
本日の衣装は青いふんわりワンピに真っ白エプロンドレス。金髪ロングのウイッグに青いカラコンも忘れずに。
所謂、不思議の国のアリスだ。
アリスがいるならウサギもいないとだろ!ってわけで隣には白いバニーガールも立ってるし、ついでにいうと、虎の着ぐるみパジャマを着た女子は俺達の後ろに積みあがった段ボールから在庫を出してくれていたりする。どうやらチェシャ猫っぽいのは無かったらしくこれでカンベンと笑ってた。それも可愛いからヨシ!!
そう、本日のコスプレの縛りは不思議の国のアリス‼
なんでか男の俺がアリスの衣装着てるけど、それはじゃんけんで負けたから。ウケそうだからバニーの方を着たかった。
しかしお客さんにはやっぱり美女バニーの方が抵抗が無いかもなー。なんて事を考えつつ腐女子貴腐人な彼女たちにこのイベント合わせて出した新刊を手渡しする。
「あ、スケブは午後から受付しますー。暫くお待ち下さいね」
「わー、プレゼントですか!ありがとうございます♡」
ここがどこかといえば、年2回お盆と年末に開催される大規模同人誌即売会の会場だ。
アニメは勿論、戦隊ヒーロー芸能人その他諸々の同人誌や手作り雑貨果ては自作CDなんて物を並べるスペースもある。ちなみにウチは、というか俺のスペースはオリジナルBLサークルだ。
培ったデッサン力と専門知識を活かした作画でキレイ目エロ漫画を目指して描いている。
社会人の財力でオフ印刷だ。今日みたいな大型イベントの時は部数限定コピー誌も作ったりもするけどね。
トップまではいかないけれど、一応壁にスペースを貰っている。
そう、何を隠そう俺は腐男子というやつだ。
恋愛対象は7:3でオトコ寄り。細マッチョな同世代と迫力美女が好きだ。
しかし恋人はいない。
ずぅぅぅぅーっといない。
恋愛に免疫が無さ過ぎてかなり惚れっぽいとは自覚しているけど、告白なんかして後々避けられたりしたら立ち直れない。
そんなわけで、日々湧きまくりの妄想を同人誌に込めまくっている訳だ。
「新刊、なんかいつもとテイスト違うね?異世界ファンタジーってやつ?」
「なんか流行ってるし、描いてみたらなんか楽しかった。ちょっとシリーズで何冊か描きたいなー」
「エルフっていうと華奢なイメージだけど、センセーのエルフ細マッチョないいカラダですねえ?脱いだらスゴイ的な(笑)」
「そこはほら、好みの問題で」
「わーエッチ(笑)」
「だってそういう本だもん」
「まあ、そうですね(笑)」
14時半過ぎ、持ってきた分の本が完売し、何冊か受け付けたスケッチブックの絵も描き終わってまったりした時間。
隣で売り子さんをしていたバニーさんも本の完売と共に店仕舞いして、今はふわふわニットの白ワンピに真っ赤なコート姿になっている。この姿も無駄に色っぽい。
今回のスペース、超大手サークルのすぐ近くでシャッターが近いから搬入搬出は楽だけど、その分風が通って寒いのだ!
俺も早く着替えたかったけど、着替えたら普通に男のカッコだしBLサークルの席にいると微妙な視線を浴びるのだ。まだアリスでいる方がマシなような気がする。
だって俺似合ってるし!
・・・・・。
それはさて置き。
「スケブ終わったし、掃除もしたし。荷物送ったら更衣室行っていい?」
「うちらは送る荷物無いよ。センセーも荷物これだけならカートでいいんじゃない?大事な戦利品とお客さんからのプレゼントでしょ?」
「まあ、今回あんまり回れなかったから本は少ないけど」
「じゃあいいじゃん。すぐ読めるよ?そして読み終わったら〇×さんの新刊貸して下さい!行ったら売り切れてたのー!!」
「そっちが目的か!まあいいけど」
「よし!じゃあセンセーは更衣室ね。こっちはすぐ帰れるようにしておくね」
「ん。頼む。あ、机にこれ貼っといて」
「はーい。あ、今回のおつかれ様イラスト可愛い系ね」
「ん。誰が見てもいいように」
「完全十八禁サークルだけどね(笑)」
「オモテには出しません」
「はーい(笑)いってらっしゃーい」
着替えバッグを抱えて男子更衣室に入ると、女装の所為かちょっとだけ視線を集めた。気がする。
細いとはいえ脱いだら普通に男なんでその視線もすぐに散ったけど。お前らは何を期待したんだ。
メイク落としシートとウェットティッシュでメイクも落とし、脱いだ衣装と一緒に仕舞う。ああ、ウィッグも脱がなきゃ。バサッと金髪を取り、適当に手櫛で整えビニールに入れこれもバッグに。
パサパサと自分の髪を梳かせばアリスから三日月彩葉に元通り。
よっしゃ帰るか。今回は好みのタイプもいない感じだし。
さらーっと周りを見渡せばゴツイ系の男が多い。筋肉は嫌いじゃないけどもうちょっと細い方が、・・・手を回して楽に抱き締められるくらいのが好きだな。
ラッキーなことにそう並んでいないトイレに寄ってスペースに戻ると、そこはもうすっかりキレイになっていた。
「おー、片付けありがとー!帰り、ご飯おごるね」
今回の、というかここ数年のスペースのお手伝いは大学時代の友達に頼んでいる。
こちらは腐男子だが彼女達も筋金入りの腐女子。
うっかりイベントで会ってお互いがそうだと知り、それ以来お手伝いを頼んでいる。
彼女達はイベント会場に並ばず入れるし、俺は毎回トイレも我慢して一人でスペースにいたので、彼女たちがちょっとの間でもいてくれると非常に助かる。ウィンウィンの関係なのだ。
そして俺達の間に恋愛関係はカケラも無いので、その点も楽。話も合うしね。
毎回、イベントのお手伝いのお礼にご飯代くらいは出させてもらっている。
お金はいらないって言われちゃったから、このくらいはね。
「じゃあ、今回はミクちゃんのリクエストでハンバーグです」
「いえーい!」
「よし帰ろう!」
そうして15時過ぎ、俺達と同じように片付けをしていた隣のサークルさんに「お先に失礼します」と挨拶をして会場を出た。
ハンバーグは安定のチェーン店。サラダとドリンクバーも付けて。
食後のデザートとコーヒーで更に1時間駄弁って帰宅。
楽しかったけどつーかーれーたー!
さて。
戦利品でも読むか!
荷解きをして今回すぐ近くだった推しの大手サークルさんの新刊をめくり、美しさとエロさに悶えてバタリとベッドに倒れた。
――――――のは覚えてるけど。
ココ、どこ。
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