アスパラガス軍曹とあっし、ラディッシュ一等兵
ニルニル
アスパラガス軍曹とあっし、ラディッシュ一等兵
ヨーソロー! あっしはおカタくて真面目で有名なアスパラガス軍曹第一の部下、ラディッシュ一等兵でござんす!
あっしたちが所属するのは名誉ある、『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』でござんすよ~! この軍団の中で、日々あっしたちはたっくんのママさんの工夫・指導のもと、ママさんの長男であるたっくんによりおいしく食べてもらえるよう、己をびしばしとしごいているんでやんす!
ところで、最近この『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』の中で、あっしの上司であるアスパラガス軍曹がなにやら最近あやしい動きをしているというウワサが立っているんでやんす。これが本当ならイチダイジっ! あのおカタいアスパラガス軍曹に恋の予感が―――!? はたまた『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』から裏切り者が―――!? どっちに転んでも大スキャンダルでやんすよ~!
ということで、アスパラガス軍曹が午後のお風呂タイム(アスパラガス軍曹は若くてイケメンでやんすから、アスパラガス軍曹のお風呂タイムは激混みでやんす)を過ごしているなか、軍曹の書斎にお邪魔したでごぜえやす! さすがおカタい軍曹、遊べるものがマンガ本一冊も置いてないでやんす! こんなところ、あっしなら一時間で爆発してしまうでやんすよ~!
ややっ、引き出しの中に怪しいメモが……! こ、これは……。
『たっくんがこのおれ、アスパラガスだけを毛嫌いしている』……ですって……!?
そ、それで軍曹が、最近夜な夜な逆立ちして身もだえしながら冷蔵庫内の野菜室百周をし、ほふく前進をしながら反復横跳びを繰り返し、キッチンの蛇口で滝行をしながら夜食をかっこむことで自分を鍛えていたのでやんすね……!? でも軍曹、ことは本当に軍曹一人で解決できることでやんすか……!? あっしは心配でやんすよお!
軍曹の秘密はあっしの秘密、軍曹の秘密はみんなの秘密でやんす!ということであっしはさっそくアスパラガス軍曹だけがたっくんに毛嫌いされているらしいことを『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』じゅうに言いふらし、全員に相談してみたでやんす! 上から下にも、下から上にも相談しやすい気質、それこそがこの『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』のいいところでやんす!
するとトマト大尉(この軍団で一番えらいお方でやんす)が重々しく全員に命令を下し、アスパラガス軍曹はお風呂場に引き止め、他みんなでアスパラガス軍曹とママさんについての情報を集めることになったでやんす!
さ~、あっしも頑張って情報を集めるでやんすよ~! なんてったってあっしは、アスパラガス軍曹の第一の部下でやんすもの!
みんなの集めてきた情報を統合するトマト大尉。するとトマト大尉の目が、有力な情報らしいものに鋭くきりりと光ったでやんす!
「たっくんのママさんは、アスパラガスを茹でて切ってたっくんに出していらっしゃる……そうじゃな」
「はっ、はい! そうでやんす!」
なんと! あっしの集めた情報でげした!
「なんとな……」沈黙するトマト大尉。しかし、すぐに右手をあげて、みんなに指示を出したでやんす!
「みなのもの、すぐにたっくんのママさんに、アスパラガスの根本らへんの皮はむいてたっくんにお出ししていただくよう働きかけるのじゃ! よいか、アスパラガスのあのへんの皮は、繊維が口に残ってしまって食べづらい!」
「たしかに! たっくんがアスパラガスを食べたあと、なにかくしゃくしゃした繊維を吐き出しているのを見たことがある!」
「なるほど! たっくんが無理にアスパラガスを食べたあと数日、うんち殿が出ないとうなってらっしゃったのも、あの繊維を無理に飲み込んでいたせいか!」
「その通りじゃ! そして、アスパラガスの根本らへんの皮は皮むき器、ピーラーでやるとシュッシュとむけて事が早い!忘れずにママさんに伝えるのじゃぞ!」
「了解!」「ラジャー!」「出動だー!」
そしてトマト大尉は、あっしに向かってウインクをしたでやんす。
「アスパラ殿を風呂場から出しておやり。今頃のぼせてホワイトアスパラならぬ、レッドアスパラになっとるでな」
「ラジャーでやんす!」
あれから数日後のある日。あっしの一番の上司であるおカタいアスパラガス軍曹が、涙しながらスキップして野菜室内を十周している姿が見られた『たっくんに食べてもらいたい野菜軍団』。
よかったでげすね、アスパラガス軍曹!
おしまい
アスパラガス軍曹とあっし、ラディッシュ一等兵 ニルニル @nil-nil
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます