第9話
心は、闇だ。
ある焦点だけスポットの当たる、闇だ。
スポットの当たった所だけ知覚される、闇のようだ。
どこにスポットを当てているか、どうか。
ずっと当てているから、それが全てだと思い込んでいた〈あの頃〉。
そこから、食み出した所に在る思いを知った〈あの頃〉。
どちらも時間的な経過を見る。
ひとつ所に同じ心は居ないのだ。
焦点の当て方を模索していた〈あの頃〉の。
あれは、誰も知ることのない私だった。
もう、書き込まれたノートは捨ててしまった。
無ーい。
もう、この世から消え去った〈あの頃〉の。
記憶にだけ留めている限りの私。
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