第8話

うつらうつらするような、心地よい揺れや、振動音、適度な気温。

これがバスだと言わんばかりに。


よく知っている。

あのバスだ。


もっとも〈あの頃〉のバスは、座ってなど居られなかった。


満員の、押し込まれて上った、僅かな段差から落ちそうになりながら、手摺りに掴まって耐えていた。


心など知らない。

そんな頃。


私は私の闇の中で、きっと藻掻いていたんだと思う。


ピークだ。


内面と外面の区別など知る由も無い。

私は私を、優しい、心の美しい子だと信じていた。


心など知りもしなかったのに。

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