『回送バス』

ぽふ、

第1話

どうやら、回送のバスに乗ってしまった。

私の他には乗客の居ない。


外は、夜か。


きっと、これは夢だろう。


窓に映る自分の顔を、いつものように見栄えのいい角度にして眺める。

斜め45度と言ったか。

物の本の記述に由れば。


心の窓に映るのは。


ふと、そんなフレーズを思い出す。


そう。

〈あの頃〉も、こうして車窓を眺めてた。


その実、見つめていたのは自分だった。

自意識過剰。

過剰なまでに見つめて、いったい何が見えていたのか。


見ていたものの儚さを、思い知る時が来るとも知らずに。

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