上質なヒューマンドラマ

現実世界であやかママのような人が周りにいる人は幸運だと思う。
善意のつもりなのだろう、苦しんでいる人に対して、苦しくても立ち向かわなきゃいけない、逃げずに戦えと、したり顔で口にする連中のなんと多いことか。
それで追い詰められて鬱になったり、果てには自ら命を断ってしまうような人が大勢いるにも関わらず、そういった風潮は無くならない。
「逃げちゃ駄目だ」では無い、「逃げなきゃ駄目だ」と言ってくれるあやかママのような人が、現実にもっと沢山いればと、そんな風に思ってしまう。

物語の中で、あやかママは相談に来た相手が何を望むのか、その望みを引き出し、ただそれを後押しする。
相手を否定することは無い。
ただ相手の思いを受け入れ、肯定し、道を指し示す。
三人の登場人物はそれぞれ、そのあやかママの言葉で自身を肯定し、前へと進む力を得る。

文章は軽妙で、広島ネタ等のユーモア要素が各所に散りばめられている事や、あやかママの柔らかいキャラクター等もあって、気持ちよく読み進めることができた。
そして、最後まで読み終えた後には、暖かく気持ちの良い後味が残った。

質の良いヒューマンドラマを探しているなら、是非この作品に目を通して見て欲しい。

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