ヒマワリ

 俺とあやめさんが出逢ってから、約2年が経った。この2年で、俺はだいぶ変わった。


 まず、あの日。あやめさんに抱き締められて泣いた後、家に帰ってから父さんと話した。今まで伝えられなかった事をお互い話し、朝まで泣いた。前よりは、家族仲も良くなったんじゃないだろうか。あの日程泣いた日はないだろうな。


 2つ目、母さんの墓参りに行った。父さんと桃真はちょこちょこ行ってたのは知ってたけど、俺は母さんの葬式以来、母さんに近づかなかった。でも、母さんに会って言えなかった事も全部言って、謝ることも出来た。その時、突然凄い突風が吹いてきて転びそうになった。もしかしたら、母さんが会いに来たのかもしれない。なんてそんな事を思って名残惜しくも家に帰った。その後、俺も月に一回は墓参りに行くようになった。


 3つ目、一人称が戻った。ずっと母さんが死んでから「僕」って言うようにしていた。多分、無意識のうちに自分を隠すのに僕って言ってたんだろう。一人称を「俺」に戻した時、桃真が「兄ちゃん俺呼びに戻したんだ。なんで」って聞かれ続けることになった。


 4つ目、俺とあやめさんが、かなり親密な仲になってきた事。あの日以来、一緒に出掛けたり、あの喫茶店に2人で行く事が増えた。あやめさんが笑顔を見せてくれることも増えた。でも「付き合う」までには中々いかなかった。なんとなく、この距離感が心地良い気がして、次に進むのが怖かったから。


 でも、今日は勇気を出すんだ。


 母さんは、花を愛していた。よく俺と桃真に花の種類と花言葉を教えてくれた。桃真は興味がないみたいで直ぐに遊んだりしてたけど、俺は意外と好きだった。そこで、俺等の名前の意味を知った。


 竜也の「竜」は、竜胆りんどうからきているらしい。桃真の「桃」は、そのまま桃。


 「母さんね、花の中で一番竜胆が好き。竜也も、竜胆みたいに優しい心を持って、誰かに寄り添える人になって欲しいな」


 俺は、そんな人間に今なっているんだろうか。誰にも、この問いは答えられないかもしれない。俺自身分からない。でも、これだけは確かだ。


 目の前で影がよぎる。顔を上げると、あの日に似たあやめさんが居た。


 『待ちましたか?』


 『いや、さっき着いたばかりだから』


 相変わらず、ふわりと微笑む姿に胸を打たれる。


 今日も、相変わらず暑い日。でも、今は夏も好きだ。


 眩しい日差し、空は透き通ってよく映える、そして何よりも大切で愛おしい君。


 あの日、俺は君に一目惚れした。


 『伝えたいことがあるんだ』


 君に、俺の気持ちが届きますように。


 願わくば、ずっとこの先も、俺の気持ちと君の気持ちが、繋がっていますように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の言葉を花に乗せて 四季秋葉 @new-wold

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ