「つめ研ぎ」という、私たちが生活する上で大切な指先に着想が練られている物語です。身近に感じながらも意外性があり、独自の創造力に富んだ素晴らしい作品です。
女主人公ヘンナの、お仕事に対する姿勢や実直な性格には読んでいて気づきがあり、学びがあります。一人ひとりのお客さまに真摯に向き合い続ける姿勢が丁寧に描かれています。また師匠やお客さまは独自の感性や個性があり、その描写が優しく強く表現されています。私も含めて虜になった読者さまはきっと、「ぜひヘンナにネイルしてほしい」と何度願ったか分からないことでしょう。
またこちらの作品はお仕事とも絶妙に絡み合ったラブロマンスが魅力的に描かれています。二人の距離の縮まり方には人柄が表れていて、読んでいて微笑ましい気持ちになりました。二人はそれぞれ仕事の関係で危険な立場にもありますが、今後も乗り越えながら絆を深めていくことを信じています。
ヘンナの使い魔であるロウソンも愛らしく、「わふん」「わひん」と言った鳴き声の表現がいつも可愛らしくて素敵だなと思いながら読ませていただきました。
本作品には心が温かく優しい気持ちになる名言がたくさんあります。アニメとしても観てみたい素敵なお話です。ぜひ皆さまもお手にとって味わってみてください……!
最新話の51話まで読んだ段階でのレビューになります。
ただ物語的には50話で一区切りついていますので、しっかりとした読了感を味わうことができますので安心してください。
世界観としては西洋ファンタジーなんですが、浮ついた雰囲気ではなくて、なんというか日本の時代小説的な静謐とした落ち着いた雰囲気を持つ「静」のファンタジー小説という印象を受けます。というか、小説がもつ雰囲気は「静謐なミステリー」といった感じの落ち着いた雰囲気の物語です。
世界設定も秀逸で、「爪」というものにフォーカスし、それが世界でどういう役割を持つのか? とういうことが徐々に明かされていくのですが、それが少しずつ物語をじんわりと広げいていく感じで……。うーん、ここらへんの読み味も「ミステリー」といえば、ミステリーなんですよね。本当に独特の読み味の小説です。
どうですかね。色々な細部のコダワリ、落ち着いた雰囲気、50話が完結だと仮定した時の読了感のさわやかさ。多分、この小説にハマるのは20代〜30代の女性だと思うのですが、男性が読んでも充分満足感が得られるユニセックス的な文芸寄りの小説だと思います。特にミステリーの雰囲気が好きな人はハマれると思います。是非読んでみてくださいね!