私と伯父さん

みかさやき

私と伯父さん

「送りに来たよ。今日はピアノだったっけ?」

「そうです。よろしくお願いします」

 運転席にいる伯父さんに話しかけて、私は後部座席に座る。

 両親は仕事で忙しく、ピアノ教室は徒歩で行けるほど近くない。それでも今、私は伯父さんにピアノ教室への送り迎えを頼んでいる。

 ここ最近は塾への送り迎えも伯父さんに頼んでいるので、両親よりも会っている時間は長いかもしれない。

「…………」

「…………」

 とはいえ伯父さんは母や父よりうーんと年上で、あと10年で還暦だ。そんな伯父さんと共通の話題なんてなくて、車内ではだまっていることになる。



「久しぶり。紗綾ちゃん」

 ピアノ教室が終わって歩いていると、ひかりさんが話しかけてきた。

 ひかりさんは私よりも年上で、今は中学2年生。確か中学入学と同時にピアノ教室の時間が変わって、私は会えなくなったんだ。

「お久しぶりです。今帰りですか?」

「そうそう。今日からまた時間が変わったの。今通っている塾の関係で、前通っていた時間が無理になったから」

「そうなんですか。高校受験関係ですか?」

「そう。もう中二だからね。中三も近づいてきたし」

 中学三年生になるってことで、勉強は大変らしい。私はその話を聞きながら、伯父さんが待つ車へと向かう。

 今日もいつも通り伯父さんが迎えに来ているはず。だから少ししかひかりさんとおしゃべりできなくて、残念だ。



「あの人危なそうだよ。なんか女の子とか誘拐しそう」

 その言葉を残して、ひかりさんは駅へ向かっていった。

 ひかりさんがあやしんでいるのは、私の伯父さんだ。どうやらひかりさんは今見かけた人が、私の親戚ではなくて赤の他人に見えるらしい。

「どうしてピアノ教室の近くにいるのかしら?」

「なぜかしらね。子供を誘拐するため?」

 近くを歩く専業主婦らしき女性2人も伯父さんを見て、こそこそと話している。

 どうやら伯父さんはフツーに考えるとあやしいらしい。私を迎えに来たフツーの人には見えないのかな。



「すみません。警察です。お話よろしいでしょうか?」

 いつものように伯父さんと一緒に帰宅すると、警察に声をかけられた。

 車内で伯父さんと警察官の人が話すことになり、私は数人の警察官に囲まれて話が終わるまで待つことになった。

 どうやら私は警察官に見張られているようで、すぐ近くに家があるのに帰れない。

「どうして伯父さんは警察に話しかけられているんですか?」

「大人の事情があるんですよ」

 周りにいる警察官の人に話しかけても、はぐらかした答えしか返ってこない。

 これは未成年と大人が一緒に行動しているからかな? やっぱり未成年と大人が一緒だと誘拐に見えるんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

私と伯父さん みかさやき @sarayuhaomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説