第32話

榊は、5人中4人の彼女に振られ、とうとう残る彼女は1人だけになった。もちろん、私はその残りの1人を知らない。これに懲りたら股をかけるのはやめて欲しいと思う。見ているこっちがヒヤヒヤするのだ。


『それにしても彼女に振られたのに落ち込まないってどんな精神してるんだろう』


私なら、たぶん3ヶ月くらいは引きずると思う。私ってやっぱり重いのかなー。


私が恋愛に対してあまり積極的でない理由は昔の失恋が原因であった。無意識の内に自分が傷つかないように殻に閉じこもってしまったのだ。





私には、14歳の頃好きな人がいた。その子は私の幼馴染でいつも私の前を歩いて、臆病な私を引っ張ってくれていた存在。いつもきらきらしていて、まわりからも慕われていた。私とあの子とじゃ、月とスッポンだった。何もかもが釣り合わなかった。それなのに私は、ずっとあの子の隣にいた。


ある日の昼休み


『丸川さんって正直言ってーーさんと釣り合って無いよねーwなんでいっつも一緒にいるんだろー?』

『あの2人幼馴染らしいよ』

『へー、そうなんだ。ーーさんは丸川さんが1人ぼっちで、可哀想だから一緒にいるんだろうね』


偶然聞いてしまったその会話。分かっていたことだった。でも、どうしてもあの子と一緒に居たかった。私は、泣きながら保健室に走ってその日は早退した。


その日を境に私は不登校になり、ほどなくして転校した。

それっきり、あの子とは連絡を取っていない。私がスマホを持っていなかったからだ。


その出来事が、トラウマとなり今でもあの時の事を思い出すと吐き気がする。あの子の名前も、顔も忘れてしまった。それからというものイメチェンをして、言葉使いも性格も変えた。昔からでは考えられ無いほど成長した。恋は人を成長させるって本当だったんだなーって思う。だから、私はもう二度と本気の恋はしない、と誓ったのであった。


まぁ、でも今となってはいい思い出だと思う。


1人でたそがれていたら、スマホに通知が来た。榊からだった。


『今日、家に彼女連れてくるから。』


あぁ。私はこの一文で理解してしまった。まぁいつも通りなんだけどね。要は、今日は彼女と家でイチャイチャしたいから、家には居ないで欲しいという事だろう。榊に了解のスタンプを押して、とりあえずひと通り部屋を片付けて今日はどこに泊まろうかなと考えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同居人のハーレムを奪ってしまった。 南極ペンギン @amaori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ