あわぶくのこい
菜の花のおしたし
第1話 ファーストラブ
病院の中庭で彼女は本を読んでいる。
僕は彼女のそばに走っていく。
彼女は本から目を離して、僕を見る。
「こんにちは。」彼女は言う。
「こんにちは。
何の本を読んでいるんですか?」僕は聞く。
そこからベンチに座って、色んな話しをした。
「じゃあ、また、明日も来ますね。」
そう、僕が言うと彼女はニッコリ笑って
手を振るんだ。
翌日もその翌日もずっと、ずっとさ、
僕は彼女に会いに行く。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
挨拶はいつも同じ。
美桜、僕たちはね、高校生の時から
ずっとね、一緒だったんだよ。
覚えてないかい?
あの、二人乗りした坂道。
学校の前のパン屋さんの焼きそばパン。
夏祭りの帰り道の初めてのキス。
君は東京の大学に行くって決めた時には
喧嘩したね。
都会でキラキラしていく君が悲しかった。
そんな時だったね。
君が事故にあったのは。
僕は何もかも放り出して君のところへ行ったんだ。
何日も何日も君は眠り姫のようだった。
僕は止めようとしても涙が溢れて。
三ヶ月たったある日、君は眠りから醒めた。
僕はこの奇跡を神様に感謝したんだ。
本当だよ。
美桜が帰ってきてくれた。
もう二度と離さない。
僕は決めたんだ。
美桜、美桜、、。
君は昔の事は何もかも覚えていなかったんだ。
それどころか、一晩眠れば、全てを忘れてしまうんだ。
神様、美桜を返してください。
僕は両手を震わせて祈った。
美桜、そこにいるのは、美桜だけど、
僕のことなんか知りもしないんだ。
毎日が初めてましてだね。
僕はそれでもいいんだ。
美桜はやっぱり、僕の好きな美桜なんだ。
一緒にいるとね、感じるんだ。
昔の美桜と中は変わってないってね。
僕は毎日、毎日、君に逢いに行くよ。
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