第2話 粉雪
私は誰なんだろ。
ある日、目を開けたら、天井が見えた。
そしたら、急に知らない人達が
「美桜、美桜」って、、、。
何それ?
誰なの?
ここはどこなの?
何にもわからない。
わかってるのは人間だってこと。
最近になってわかったのは、私の記憶が
一晩で無くなること。
これまでの事も何も覚えてないこと。
怖かった。
何もかもが。
全てが嘘なんじゃないかって。
混乱した。
そんな時、心理士さんが言ったの。
今日あったことを記録して置いたらどうかしら?
とね。
それからは、毎日、ノートに今日あった事を書いたわ。
そして、朝が来て目覚めたら、まず、ノートを読む事にしたわ。
拓ちゃん。
あのね、本当はね、毎日ね、
「こんにちは」って言ってくれるのが
拓ちゃんなんだって分かり始めてるの。
拓ちゃんが話してくれた事もね、ノートに書いてるんだよ。
高校の時からずっと一緒にいたこと。
自転車の後ろに乗せてもらってたこと。
坂道の下りでふたりで転んだこと。
学校の前のパン屋さんで、ひとつしか残ってなかった焼きそばパンを半分こしたこと。
夏祭りの浴衣の私にメロメロになっちゃって
初めてのキスしたこと。
私が東京に行くって決めた時に、拓ちゃんが
ものすごく怒って、私が泣いちゃったこと。
東京での生活が楽しすぎて浮かれちゃってたこと。
そして、事故に遭ったこと。
ねぇ、拓ちゃん。
私、拓ちゃんを幸せにはできないと思うんだ。
だからね、いつまでも初めましてにしようと決めたの。
いつか拓ちゃんが嫌になってね。
ここに来なくなるのがね、怖いの。
記憶は無くてもね、拓ちゃんが隣に座ってるとね、安心するの。
こころがね、嬉しがって仕方がないの。
拓ちゃん、早く、私を忘れて、、。
拓ちゃんにお似合いの女性とね、一緒に
新しい道を進んで欲しいの。
拓ちゃん、拓ちゃん。
胸が苦しくて。
あ、粉雪が舞ってる。
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