第7話 逢いたくていま
「ねぇ、お母さん、お姉ちゃん、また
あそこに行ってるの?」
「そうよ。
拓郎さんの事だけは思い出したんだけれどね
拓郎さんが亡くなった事は忘れてしまってるのね。だからね、あの場所で待っているのよ。」
美桜は病院の中庭のベンチに座ってる。
本を読みながら。
「拓ちゃん、今日はくるかな?
昨日はきたんだっけ?
ふふ、忘れちゃった。」
桜の花が満開。
一匹の蝶が美桜の周りを
ひらりひらひらと揺れている。
そして、美桜の肩にそっと止まった。
「美桜、いつまでも、そばにいるよ。
君が幸せになるのを見守ってるからね。
美桜、僕の生涯をかけて守りたかった
ただひとりの女(ひと)。
僕は君との思い出をね、覚えているよ。
だからね、今、とても幸せなんだ。
美桜、幸せをありがとう。」
Fin
あわぶくのこい 菜の花のおしたし @kumi4920
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