第37話 番外編⑦ 妹の帰省(その5)

翌朝、目覚めるとケイは既に起きて出掛けた様子だった。


私の所有物件の見回りと、町田ベーカリーさんに行ったのだろう。



さてと、私も起きて朝食の準備をしよう。


洗顔を済ませて、軽くメイクして、髪をシュシュで束ねて、サラダとオムレツを作る。


コーヒーをドリップしていると、玄関のチャイムが鳴った。香織さん、起きたかな?


「はいはい~」と玄関に出ると、やはり香織さんだった。


「おはようございます、ハナさん」


「おはようございます。さ、上がって下さいな?」


「お邪魔します…。あれ、お兄は?」


「朝のお仕事と、多分パン屋さんに行ってるんだと思います」


「そうなんですね?私…、ここに居て大丈夫ですか?」


「勿論。さ、コーヒーをどうぞ?お砂糖とミルクは?」


「両方いただきます…」


う~ん、まだ緊張してるなぁ。


「も~、緊張しないで下さいな?気楽に気楽に!」


「だって…!ハナさん…凄い美人なんだもん!」


「そう…ですかね?正直言うと、私はケイより三つも歳上なんで…、香織さんから結婚を反対されるんじゃないかって、ビクビクしてたんですよ」


一緒にコーヒーを飲みながら、自分の素直な気持ちを吐露してみた。


「…それは、ありません。お兄は優しいんですけど、一度決めた事は最後までやり遂げる人なので…。

それに、ハナさんは、お兄より歳上って感じ、あまりしませんよ?お兄と同じ歳位に感じます」


「そうなんですねぇ?喜んでいいのか、ケイが少し老け顔なのか…」


「アハハ!お兄は昔からあんな感じの顔ですよ。確かに、お兄の同級生とかと比べたら、大人びた感じでしたね」


「昔からそうだったんですね?

私も、最初会った時には同じ歳位だと思ってたんです。なので、年齢を聞いてびっくりしたのと、ちょっと残念だったのと…」


「年下は、嫌だったんですか?」


「いえ、逆にケイが嫌なんじゃないかと…。最初は随分気にしました」


「う~ん。二人を見てると、年齢どうこうの問題は無さそうですけどねぇ?

お兄は高校生の時に、好きな人がいたんです。

けど、歳上だったのと、友達の彼女だったんです。実らぬ恋だったんだすけど、『遠くから見てるだけで充分だ』って言ってました」


「え~っ?それは初めて知りました。

元々、歳上が好きなのかな?

そういえは、千崎さんも歳上だって言ってましたね」


「偶々だと思います。けど、好かれるのは同級生とか、年下の娘だったんですよ。

けど、断ってましたよ。付き合ってみれば良かったのに」


「そうなんですか…。実は、前の職場を辞める時も、同じ歳の女性から告白されたそうなんです」


「えっ?そうなんですか?初めて聞いたな…」



玄関で物音がして、ケイが帰って来た様子だ。


もう少し二人だけで、香織さんと話していたかったな…。




──────────────────────




玄関を開けると、コーヒーの匂いがした。

話し声もするから香織も起きている様子だ。


「ただいま帰りました」


「お帰りなさい。やっぱり町田ベーカリーさんでしたか」


「ええ、香織に食べさせたいパンがありましてね。見廻りの帰りに寄りました」


「何々!?そんなに美味しいパンなの?」


「いろいろ買って来たけど、これなんだよな」


俺は香織に食べて欲しいパンを手渡した。


「オニオン・チーズパンじゃん!私が好きなの覚えてたんだね?」


「まあ、食べてみれば勧めた理由がわかるよ」


包みを開けて、香織は不思議そうな顔をして食べだしたが、途中で驚きの表情に変わった。


「この味…似てる!昔近所にあった坂田のパン屋のオニオン・チーズパンにそっくり!?」


「俺も、最初驚いたんだ。角食も美味いのと、メロンパンも坂田のに似てるんだよ」


「へぇ~!何か繋がりがあったりするのかな?」


「町田ベーカリーの店主さんに聞いてみたら、繋がりはないって言ってた。偶然似てるって訳なんだ」


「形も違うもんねぇ。坂田のパン屋が閉店した時はショックだったもんね」


「ケイは町田ベーカリーさんの常連でファンですもんね」


「見事にハマッちゃいましたね。朝に美味いパンが食べれるのは間違いなく幸せですよ」


「そうですね。さあ、サラダとオムレツもどうぞ」


「いただきます。オムレツふわふわですね!…美味しい!ジャガイモと挽き肉が入ってる。

お兄はしあわせ者だね?」


「まあ、毎日こうじゃないけどな。節約する日だってあるぞ」


「ふ~ん。あ、そうだ。今日の夜は、リッコとノンと飲みに行く事になったから」


「俺が送り迎えするよ」


「え?悪いよ」


「お前の為に休みを取ったんだ。遠慮するな」


「わかった。…って何これ!?美味しい!!」


「セロリのナムル風なんです。ケイが大好きで」


「ハナさん、後でレシピ教えて下さい」


「いいですよ。じゃあメッセージアプリのアドレス交換しましょうか?」


「するする!」


思ったより仲良くなってるな。


思った通り、二人の相性は良い様子だ。

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恋のカラクリ模様 宇治ヤマト @abineneko7777

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