『これが最後の恋になりますように』を一章まで読ませていただいた感想。
羽乃架の内面の旅が深く描かれていて、彼女が直面する様々な感情や困難に心を引かれました。彼女が母から受けた衝撃的な言葉、夜舞病棟での生活、そして新しい環境への適応は、羽乃架の成長と自己発見のプロセスを示していて、特に、雨依との出会いが彼女にもたらす新たな視点と理解は印象的でした。彼との関係が深まるにつれ、羽乃架の自己認識にも変化が見られ、その変化を見守ることで親しみがより深まりました。雨依の家族による温かな迎え入れと、羽乃架が新しい家族との関係を築いていく過程も、彼女の心の動きを感じさせられました。
まだ物語は完結していないため、これからの展開にも期待が膨らみます。
主人公 羽乃架(はのか)の母が残した呪いのような言葉。
それさえなければ羽乃架はとても可愛らしい少女です。夜舞病棟を出た羽乃架は雨依(うい)様という青年と出会い相思相愛(に見える)の関係になります。
雨依様との関係の仲で次第に前を向き始める羽乃架が本当に可愛らしいです。
冒頭のセリフの意味や夜舞病棟の設定について深く語られないことが、かえって物語に惹きこまれ羽乃架の運命を知りたくなります。
心象風景の描写が巧みで羽乃架の心情が色に現れています。
また遥叶(はると)という幼馴染も彼女のことを……?
物語のクライマックスが知りたくもあり、この世界を長く楽しみたいとも思います。
冒頭のシーンから、衝撃的です。
大好きな母から告げられた、残酷な言葉。
「あなたは、人を殺す可能性があるの」
可能性。それは絶対ではない。
けれど少女は母から名前を呼ばれることはなく、突き放され、病棟で暮らします。
遠慮がちな少女は、笑うことも楽しむことも幸せになることも、憎むことも、恐れている。
けれど、そんな少女(名前は羽乃架)の世界には色があり、空や雪の描写が素晴らしく美しい。
たとえば、青空が雪空に変わり、世界が白くなる。そこに現れた男性が差した傘が、空色。男性の体に積もった雪を払う力加減がわからずに戸惑う少女。
美しく繊細で静かな日本映画を見ているような、色の視点。人とかかわることを恐れる少女の心の動き。
作者独特の感性で、羽乃架の心の内を表現していくさまは、流して読むにはもったいない。ていねいにていねいに何度でもじっくりと味わいたくなります。
病棟が閉鎖することになり、羽乃架を引き取ってくれた魔法使い、雨依様。
彼とのやりとりは実に色っぽくて、どきどきしてしまいます。
けれど、ときめきがつまっている。キュン♡
というには、引っかかる。
それはやはり、「あなたは人を殺す可能性があるの」という母親の言葉がつきまとっているから。
羽乃架が言葉の呪いに囚われているのと同じように、読者もまた、不安を感じずにはいられません。
病棟を出た羽乃架の世界が広がっていく。
楽しいこと。嬉しいこと。幸せなこと。好きなこと。欲しいものを知り、笑いたいと願う。雨依様が心を占めていく。
それと同時に、私は不安になってしまいます。
羽乃架は憎しみを覚えるようになるのだろうか?
愛する苦しみを知ることはあるのだろうか?
世界は美しい。けれど残酷でもある。
それは愛に対してもいえることで、愛は美しいけれど、残酷でもある。
羽乃架には幸せになって欲しい。
人を殺す可能性がただの可能性で終わってほしい。
作品タイトルの『これが最後の恋になりますように』
最後の恋が幸せなものでありますように。そう願わずにはいられません。
一言でいえば「読みやすい」、物語に「入り込みやすい」小説です。読者さまを引きつけるためには1話ってメチャクチャ大事なんですが、作者さまは1話をあえて詩的な表現を使うことによって入りやすくしています。そして、それからは短い短文を積み上げる形で物語を表現している小説です。
ただ、読みやすくはあるのですが、全体的には寂寥感が漂い、恋愛にしてもその輪郭は淡く、不思議なはかなさがある物語になります。うーん、作者さまごめんなさい。やっぱりこの小説は女性向けの小説でして、男性は敬遠する人が多いかもしれないです。
でも女性の方でしたら、こういう雰囲気が好きな人が多いと思います。なんというか、水彩のようなこの世界観は、なかなか出せるものではないと思いますので……
ということで、中高生から大人の方まで楽しめる恋愛ファンタジー小説だと思います!
幼心に絶対忘れないであろう一言を告げらて物語が始まります。
導入からインパクト大と思いきや、導入の引きも見事でふんわり香るような謎を残して物語の中へと惹きこまれてしまいました。
500文字にも満たない導入でこの緩急のつけ方は圧巻です・・・!
ですが、個人的には語り手である主人公の心情描写を注目してほしいです。
凍えきった主人公の心の嘆きがあり、そんな心がそっと包まれた喜びがあり、心が揺れ動いている。ということがどのようなものか主人公が読み手に必死で叫んでいるかのように響いてきます。
あらすじにある通りの展開でこちらの気持ちも前を向けたことでレビューを投稿しましたが、不穏な空気が拭いきれません!
そんな惹きこまれる謎に包まれた魔法世界の物語。みなさんも主人公に寄り添って謎に迫ってみてはいかがでしょうか!