プロローグ3 Child Lock
武装した大人たちが、合図を受けて一斉に銃口を向ける。その矢印の先には、対照的にほとんど何も身にまとっていない子供たちの姿。武装兵らと比べると統制は取れておらず、各々が思うがままに動いている。しかし、誰一人として逃げる様子は無い。
これは、世界中を巻き込んだコドモとオトナの全面戦争だ。
*
「いや〜派手にやったし、やられたね」
戦火の跡地に伏す無数の亡骸たち。大きな者から小さな者まで、ほぼ同数存在しているように見える。そのうちの1つ、大きな者の持ち物を漁りながら、隣でユスフが話しかけてくる。齢は11、今もガッコーがあれば小学校5年生に当たる年齢の男子だ。
「奇襲された事を鑑みれば、かなり抑えられた方だろう」
コドモ軍の拠点は5つあるが、そのうちの1つが今回襲撃にあった“リブロ”だ。この土地はオトナ軍との境界線に非常に近いため、こうしてよく奇襲にあいやすい。
だが、反対にそれを見越しての対策も十分に行っていた。具体的には、カルスト地形となっているこのやや窪んだ土地に、予めガソリンを撒いておいたのだ。そして、侵入の第一報からこちらにおびき寄せるような動きをし、まんまと入っところに火の矢を打ち放った。何発か食らいはしたが、それでもすぐに相手陣営を撤退させ被害を最小限に食い止めることが出来た。
「確かに!リルカ発案の“ファイヤー撒き巻き作戦”は大成功だったね。さすが、我らが班長」
「ダサい名前を付けるな。それに、それほど捻った作戦でもねーだろ」
「褒めてんのに相変わらずツれないね。女の子がそんな強い口調使っちゃダメなんだよ?」
「それだって大人が勝手にカテゴライズしたもんだろ」
「そのとーり」
そう言うとユスフはまた亡骸を漁り始め、あんま良いもんねーなと呟いた。その言葉を背に、リルカは子供たちの方へと歩みを進める。
この争いが始まった発端は、3年前の分断策が原因だ。何を考えたか、世界大統領が突然「コドモたちを1箇所にまとめろ」と言い出した。ただでさえ労働力が足りていない現状で、共働きしながらの子育てというのは既に限界を迎えており、その様子はコドモ目に見ても明らかだった。そこで、子供たちを各地域で1箇所に纏めて、それぞれで自治を行い、まとめて育て上げてしまおうという大掛かりな政策だ。
何とも大胆で不可解な施策だが、それが勢いでまかり通ってしまうくらには、世界は疲弊していた。
そして無事コドモだけの空間が各エリアに出来た訳だが──
あまりに無計画で進めたせいか、その場での生活は非常に耐え難いものであった。ただでさえ親と離れて不安定な状態のコドモ達は、一斉に“反抗期”を迎えてしまった。
無論、理由はそれだけではないのだが。
ともかく、世界はオトナとコドモに二分されることとなった。
「ごめんね」
リルカはコドモたちの亡骸をそれぞれ巡り始めた。そのほとんどが最前線で戦っていた年長者と、逃げ遅れた年少者だ。
「相変わらずリルカもお人好しだなー」
そのドラマ、続きがあると思うなよ 初原ジン @uijinx
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